認知症患者の増加に伴い、認知症に関連する行方不明やその後の死亡が深刻な問題となっている。しかし、認知症関連の行方不明発生率、その後の死亡率、リスク因子についてはよくわかっていない。国立循環器病研究センター研究所の村田 峻輔氏らは、日本の都道府県別に集計されたデータを用いて、生態学的研究を行った。Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年6月27日号の報告。
2018年の警察庁の統計より、認知症関連の行方不明とその後の死亡に関するデータを抽出し、これらに影響を及ぼす候補変数として、高齢者の特性、ケア、安全性に関する変数を抽出した。候補変数と行方不明発生率および死亡率との関連は、交絡因子で調整した後、一般化線形モデルを用いて分析した。
主な結果は以下のとおり。
・認知症関連の行方不明発生率は10万人年当たり21.72であり、その後の死亡率は10万人年当たり0.652であった。
・高齢者向け介護福祉施設の数が65歳以上の人口10万人当たり1施設増加すると、行方不明発生率は7.9%低下した(95%CI:3.3~12.4)。
・保健師の数が10万人当たり1人増加すると、行方不明発生率が3.2%低下した(95%CI:1.6~4.9)。
・都市部に在住する割合が10%増加すると、行方不明発生率が20.3%上昇し(95%CI:8.7~33.2)、その後の死亡率は12.9%低下した(95%CI:5.6~19.8)。
著者らは「本研究結果は、認知症関連の行方不明発生やその後の死亡を予防もしくは予測するうえで役立つ可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)