認知症の早期診断を促進するために、一連の政策が実施されているものの、多くの高齢者において認知症は見逃されている可能性がある。東京都健康長寿医療センター研究所の宇良 千秋氏らは、東京都内に在住の高齢者を対象に、未検出の認知症の特徴について調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2020年4月15日号の報告。
本研究では、3段階の調査を実施した。第1段階として、東京都内某所に在住する70歳以上の高齢者7,614人に対しアンケートを郵送し、5,430人分を回収した。第2段階として、2,020人にミニメンタルステート検査(MMSE)を含む対面調査を実施した。第3段階として、MMSEスコア24未満の高齢者335人中198人を往診した。認知症診断、臨床的な認知症の評価および社会的支援の必要性は、学術チームにより自宅で評価した。心理学的、社会学的、社会人口統計学的変数の評価も行った。
主な結果は以下のとおり。
・198人中78人(39.4%)の高齢者が認知症であると評価された。
・34人は過去に認知症と診断されていた。つまり、198人の高齢者のうち、未検出の認知症患者の割合は、56.4%であった。
・認知症と診断されていない認知症の人たちには、とくに認知症診断、健康状態に関するメディカルチェック、継続的な医療と住宅支援の分野において、より複雑な社会的支援の必要性が認められた。
・さらに、フレイル(要介護状態の予備群)の兆候が認められた。
著者らは「認知症と診断されていない認知症の高齢者は、住居を失う、または身体的健康を損なうリスクがあり、このことは人権に対する脅威となりうる」としている。
(鷹野 敦夫)