日本では認知症対策として地域密着型統合ケアシステムを促進するため、2013年に認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)を策定し、2015年に認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)として改訂を行った。これらのプログラム導入後、地域の認知症ケアにどのような影響を及ぼすかについては、十分な研究が行われていない。北里大学の姜 善貴氏らは、相模原市認知症疾患医療センターにおける認知症診断を含む医療相談経路の調査を通じて、地域密着型認知症治療の現状について調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年12月4日号の報告。
対象は、認知症の鑑別診断または治療のために相模原市認知症疾患医療センターで診断を受けた患者1,480例(男性:585例、女性:895例)。薬物療法前の診察に至る経路と相談後の診断との関連について調査を行った。
主な結果は以下のとおり。
・紹介なしで受診した患者は、認知症と診断されるケースが有意に少なかった。
・精神科以外のクリニックから紹介された患者では、認知症と診断されるケースが有意に多かった。
・施設タイプと抗認知症薬の使用または非使用の比較において、有意な差が観察された。
・抗認知症薬の処方率は、精神科病院および精神科以外のクリニックにおいて有意に高かった。
・各施設で処方されている抗認知症薬のうち、約30%が保険適用外であった可能性が示唆された。
著者らは「地域密着型統合ケアシステムは、各地域内でのコラボレーションを促進することを目的としている。しかし、認知症患者に対する適切な薬物療法に関する情報は、非専門医や地域住民に十分浸透していない。医療スタッフが認知症に対する理解を深め、患者に対するより良い認知症サポートを提供できるようにするための人材ソリューションが必要とされる」としている。
(鷹野 敦夫)