中外製薬は、抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体トラスツズマブ エムタンシン(商品名:カドサイラ、以下T-DM1)について、「HER2陽性の乳癌における術後薬物療法」に対する適応追加の承認を8月21日に取得したことを発表した。手術前の薬物療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られなかったHER2陽性早期乳がんに対して、術後薬物療法の新たな選択肢となる。
T-DM1の優越性が術前療法でpCRが得られなかったHER2陽性早期乳がんの術後薬物療法で認められた
今回のT-DM1の承認は、海外で実施された非盲検ランダム化第III相国際共同臨床試験(KATHERINE試験)の成績に基づく。本試験では、トラスツズマブを含む術前薬物療法でpCRが得られなかったHER2陽性早期乳がん1,486例を対象に、術後薬物療法としてのT-DM1の有効性と安全性をトラスツズマブと比較した。その結果、主要評価項目である浸潤性疾患のない生存期間(IDFS)について、トラスツズマブに対するT-DM1の優越性が認められた(非層別ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.39~0.64、p<0.0001)。また、本試験におけるT-DM1の安全性は、転移を有するHER2陽性乳がんにおける治療で認められている安全性プロファイルと同様であり、忍容性が認められた。
【添付文書情報】(下線部分が追加)
■効能・効果
・HER2陽性の手術不能又は再発乳癌
・HER2陽性の乳癌における術後薬物療法
■効能・効果に関連する注意
〈効能共通〉
1. HER2陽性の検査は、十分な経験を有する病理医又は検査施設において実施すること。
2. 本剤は、トラスツズマブ(遺伝子組換え)及びタキサン系抗悪性腫瘍剤による化学療法の治療歴のある患者に投与すること。
3. 本剤の術前薬物療法における有効性及び安全性は確立していない。
〈HER2陽性の乳癌における術後薬物療法〉
4. 術前薬物療法により病理学的完全奏効(pCR)が認められなかった患者に投与すること。
5. 臨床試験に組み入れられた患者のpCRの定義等について、「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
■用法・用量
通常、成人にはトラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)として1回3.6 mg/kg(体重)を3週間間隔で点滴静注する。
ただし、術後薬物療法の場合には、投与回数は14回までとする。
(ケアネット 金沢 浩子)