糖尿病と膵臓がんの関連は知られているが、体重減少を伴う発症して間もない糖尿病では、膵臓がんのリスクが大幅に高いことが明らかにされた。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のChen Yuan氏らによるコホート研究の結果で、「高齢」「以前は健康体重」「意図的な減量ではない」場合は、さらに膵臓がんの発症リスクが高まることも示された。米国において膵臓がんは、がん死要因で3番目に多いという。しかしこれまで、膵臓がんの早期診断戦略を促進する高リスク群は、ほとんど特定されていなかった。JAMA Oncology誌オンライン版2020年8月13日号掲載の報告。
研究グループは、30年以上にわたり繰り返し評価が行われてきた米国の2つのコホート研究(Nurses’ Health StudyおよびHealth Professionals Follow-Up Study)のデータを用いて、糖尿病罹病期間および最近の体重変化とその後の膵臓がんリスクとの関連を解析した。
膵臓がんの発症は、自己報告または参加者の死亡の追跡調査により特定し、死亡は近親者からの報告、米国郵便公社または国民死亡記録(National Death Index)で確認された。
主要評価項目は、膵臓がん発症のハザード比(HR)。2018年10月1日~12月31日にデータを収集し、2019年1月1日~6月30日に解析が行われた。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象は、女性11万2,818例(平均年齢59.4[SD 11.7]歳)、男性4万6,207例(64.7[10.8]歳)で、このうち膵臓がん発症は1,116件確認された。
・非糖尿病者と比較した膵臓がんの年齢補正後HRは、糖尿病を発症して間もない(短期罹病)被験者で2.97(95%信頼区間[CI]:2.31~3.82)、長期罹病者で2.16(95%CI:1.78~2.60)であった。
・非体重減少者と比較した膵臓がんの年齢補正後HRは、1~4ポンドの体重減少者は1.25(95%CI:1.03~1.52)、5~8ポンドの体重減少者は1.33(95%CI:1.06~1.66)、8ポンドを超える体重減少者は1.92(95%CI:1.58~2.32)であった。
・1~8ポンドの体重減少を伴う糖尿病短期罹病者(91/10万人年[95%CI:55~151]、HR:3.61[95%CI:2.14~6.10])、または8ポンドを超える体重減少を伴う糖尿病短期罹病者(164/10万人年[95%CI:114~238]、HR:6.75[95%CI:4.55~10.00 ])は、いずれも非該当の被験者(16/10万人年[95%CI:14~17)と比較して、膵臓がんのリスクは大幅に高かった。
・膵臓がんの罹患率は、糖尿病短期罹病者で、かつ体重減少前のBMIは25未満でありそこからさらに体重が減少した者(罹患率400/10万人年)、または身体活動の増加や健康的な食事の選択が認められ体重減少が意図的ではなかったと判断される被験者(334/10万人年)では、さらに高かった。
(ケアネット)