顔に触れることは一般的な行動であり、とくに手洗い場や消毒薬の不足などで手指衛生を保つすべがない環境では、顔を触る行為が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に影響を及ぼしている可能性がある。そのため、イランではマスクを着用して顔に触れないよう指導がなされており、この状況を踏まえ、イラン・Shiraz University of Medical SciencesのRamin Shiraly氏らが成人1,000例を対象にマスク着用が顔への接触予防に有用なのかについて研究を行った。その結果、マスク着用によって顔の粘膜部分(目、鼻、口)に触れる頻度が低下したことを明らかにした。American Journal of Infection Control誌オンライン版8月12日号掲載の報告。
研究者らは2020年4月22日~5月9日の期間、イラン・シーラーズと南イランの公共エリア(公園、クリニック、銀行、バス停)において、成人1,000人(マスク着用者:568例、非マスク着用者:432例)を対象に15〜30分間の観察を行い、1時間あたりの顔全体や粘膜部分の平均接触数をANOVA(Analysis of variance)で分析した。
主な結果は以下のとおり。
・1,000例の観察場所の内訳は、公園(35%)、銀行(37%)、クリニック(26%)、バス停(2%)だった。
・全体のうち半数以上(53%)が男性で、年齢構成は若者(44%)、中年(37%)、高齢者(19%)だった。
・全体の92%は少なくとも1時間に1回は顔に触れていた。
・1時間あたりの接触平均回数±SDは10±6回だった。
・非マスク着用者はマスク着用者よりも頻繁に顔に触れており、1時間あたりの接触平均回数±SDは、11±6回 vs.8±5回(p<0.001)だった。
・非マスク着用者のマスク着用者に対するオッズ比は1.5(95%信頼区間:1.2~2.0、p<0.001)で、粘膜部分に触れる可能性が高かった。
(ケアネット 土井 舞子)