転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する新規の抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab-govitecan (SG)の国際第III相試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのAditya Bardia氏から発表された。
このSGは、多くの固形腫瘍の細胞表面に発現するタンパクTrop-2を標的とするADCで、複数の治療歴を有するmTNBCに対し、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を有意に改善することが報告された。
・対象:mTNBCに対する化学療法剤治療を2ライン以上(中央値4ライン)受けている患者529例で、免疫チェックポイント阻害薬やPARP阻害薬の既治療例も含まれる。
・試験群:SG 10mg/kgをday1、8に投与し、1週休薬の3週間隔での点滴投与(SG群)
・対照群:主治医選択の単剤化学療法(エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン)(CT群)
・評価項目:
[主要評価項目]脳転移のない症例を対象にした盲検下中央判定によるPFS
[副次評価項目]脳転移がある症例を含む全症例のPFS、脳転移のない症例を対象にしたOSと奏効率、安全性、奏効期間など
なお、本試験はデータ安全性モニタリング委員会の勧告により、早期の有効中止となっている。
主な結果は以下のとおり。
・SG群には、脳転移あり32例を含む267例が、CT群には脳転移あり29例を含む262例が登録された。
・脳転移なし集団におけるPFS中央値は、SG群5.6ヵ月、CT群1.7ヵ月で、HRが0.41(95%CI:0.32~0.52、p<0.0001)と、有意にSG群で良好であった。
・OS中央値は、SG群で12.1ヵ月、CT群6.7ヵ月、HRが0.48(95%CI:0.38~0.59、p<0.0001)と、同様に有意にSG群で良好であった。
・奏効率は、SG群35%、CT群5%と、有意にSG群で高かった(p<0.0001)。
・SG群の安全性プロファイルは過去の報告と同様であり、忍容性は良好であった。
・Grade3以上の主な治療関連有害事象は、好中球減少症がSG群で51%、CT群で33%、下痢が10% vs.1%未満、発熱性好中球減少症が6% vs.2%であった。
・SG群では、治療中止となった有害事象の発現率は、4.7%であり(CT群は5.4%)、重度の心血管系毒性はなく、治療関連死もなかった。CT群では治療関連死が1例に発生した。
Bardia氏は「SGは既治療のmTNBC患者に対する新たな標準治療として考慮すべきである」と結んだ。
(ケアネット)