中国・大連医科大学のYuan Zhang氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下の仕事再開期における不安症、うつ病、不眠症に影響を及ぼす因子について調査を行った。Journal of Psychosomatic Research誌2020年11月号の報告。
中国・山東省で2020年3月2日~8日に、割当抽出法(quota sampling)と機縁法(snowball sampling)を組み合わせた多施設横断調査を実施した。不安症、うつ病、不眠症の評価には、それぞれ全般性不安障害尺度(GAD-7)、こころとからだの質問票(PHQ-9)、不眠症重症度指数(ISI)を用いた。影響を及ぼす因子を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・3施設より4,000通のアンケートを送付し、有効な回答3,237件を収集した。
・各評価尺度に基づく不安症、うつ病、不眠症の有病率は19.5~21.7%であった。そのうち、2.9~5.6%は重症であった。
・複数の症状を合併していた患者は、不安症とうつ病の合併2.4%、不安症と不眠症の合併4.8%、うつ病と不眠症の合併4.5%であった。
・不安症と不眠症のスコアおよびうつ病と不眠症のスコアには、正の相関が認められた。
・不安症、うつ病、不眠症のリスク因子は、50~64歳、30日以上に1回のみの屋外活動であった。
・COVID-19流行期に、心理的介入を受けていた人は17.4%、個別の介入を受けていた人は5.2%であった。
著者らは「COVID-19流行下の仕事再開期には、メンタルヘルス問題の発生率が通常時よりも増加していた。現行の心理的介入は不十分であり、早期に有効な心理的介入を実施すべきである」としている。
(鷹野 敦夫)