免疫も老化、その予防が新型コロナ対策に重要

提供元:ケアネット

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公開日:2021/01/05

 

 国内初の新型コロナウイルスのワクチン開発に期待が寄せられるアンジェス社。その創業者でありメディカルアドバイザーを務める森下 竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学 寄附講座教授)が、12月15日に開催された第3回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナー「感染症と免疫」において、『免疫老化とミトコンドリア』について講演した。

風邪と混同してはいけない理由

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策やワクチン開発を進めていく上で世界中が難局に直面している。その最大の問題点について森下氏は、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のモデルが作れないこと」だという。その理由として、「マウスはSARS-CoV-2に感染しない。ハムスターやネコは感染するものの肺炎症状が出ないため、治療薬に最適なモデルを作り出すことが難しい。つまり、従来の開発方法に当てはめられず、未知な領域が多い」と同氏は言及した。

 そんな中、同氏率いるアンジェス社は同社が培ってきたプラスミドDNA製法の技術を活かし、新型コロナのDNAワクチンを開発中である。これは、ウイルスのスパイク部分(感染の足掛かりとなるタンパク質)の遺伝子情報を取り込んだプラスミドDNAをワクチンとして接種することで、スパイク部分のみを体内で発現させて抗体を産生させる仕組みである。12月23日現在、国内で500例を対象としたワクチンの用法・用量に関する安全性や免疫原性評価のための第2/3相臨床試験が行われている。

ワクチン完成までは一人ひとりが自然免疫の強化を

 国内でのワクチン(海外製含む)接種の開始時期は、2021年2月とも言われているが、実際のところ未だ見通しが立っていない。その間、個人でできる感染対策(手洗い・消毒、マスク着用、うがいなど)だけで感染を凌ぐにはもはや限界にきている。そこで同氏は人間のもともとの免疫力に着目し、「人間の体内で最初に働く自然免疫の強化」を強調した。しかし、自然免疫の機能は18~20歳でピークを迎え低下の一途をたどる。また、免疫機能の中で最も重要なT細胞の分化場所である胸腺は体内で一番老化が早いため、「加齢は自然免疫の低下だけではなく、胸腺の退縮がT細胞の老化につながり、獲得免疫の衰えの原因にもなる」と指摘した。加えて、「睡眠不足、ストレス、肥満、そして腸内細菌叢の構成異常なども免疫力の低下として問題だが、とくに“免疫の老化”が問題」とし、高齢者の重症化の要因の1つに免疫力の老化を挙げた。

免疫老化を防ぐにはミトコンドリアをCoQ10で助けよ

 この免疫老化を食い止めるための方法として、同氏はミトコンドリアの老化を助けることが鍵だと話した。ミトコンドリアは細胞の中のエネルギー生産工場で、中和抗体を作るB細胞などあらゆる細胞の活性化に影響する、いわば“免疫を正常に働かせる司令塔”の役割を司る。そのため主要な自然免疫経路はすべてミトコンドリアに依存している。しかし、ミトコンドリアも加齢とともに減少傾向を示すことから、この働きを助けるコエンザイムQ10(CoQ10)の補充が重要1)だという。また、自然免疫のなかでも口腔内に多く存在し、口腔内に侵入したSARS-CoV-2を速やかに攻撃、粘膜への付着や体内への侵入阻止するIgAもこのCoQ10の摂取により増加傾向が示唆された2)ことを踏まえ、医療用医薬品のユビデカレノン製剤(商品名:ノイキノンほか)をはじめ、サプリメントや機能性食品として販売されているCoQ10(とくに還元型)の摂取が有効であることを説明した。

 最後に同氏は「ワクチン導入には時間を要するので、現時点ではまず基本的な感染対策、生活習慣の改善から免疫力UPに注力してほしい。そのなかで免疫を上げる工夫として還元型CoQ10の多い食品(イワシ:約6.4mg、豚肉:約3.3mg[各100g中の含有量])を食べたり、プラスαとしてサプリメントなどを活用したりして、体内のCoQ10量を増やすことを心がけてほしい」とし、医療者に対しては「CoQ10量や唾液内のIgAは検査で測定可能であるため、患者の体質確認には有用」と締めくくった。

(ケアネット 土井 舞子)