片頭痛は、頭痛のいくつかのエピソードによりみられる神経学的症候群である。片頭痛の病態生理においてカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、重要な役割を果たしているといわれている。ガルカネズマブは、CGRPに特異的に結合し、CGRPの受容体への結合を阻害するモノクローナル抗体である。サウジアラビア・Alfaisal UniversityのAhmed Abu-Zaid氏らは、片頭痛のマネジメントに対するガルカネズマブ(120mgまたは240mg)の有効性を評価したすべてのランダム化プラセボ対照試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Cureus誌2020年11月22日号の報告。
PubMed、SCOPUS、Embase、Cochrane Centralより、2020年10月10日までの文献をスクリーニングした。次の基準を満たす研究を選択した。(1)対象は片頭痛患者(2)ガルカネズマブ 120mgまたは240mgによる介入(3)対照薬プラセボ(4)事前に設定した有効性および安全性アウトカム(5)ランダム化プラセボ対照試験。有効性アウトカムには、片頭痛の日数(MHD)の変化、急性期薬物治療によるMHDの変化、患者による重症度改善度(PGI-S)スコア、migraine-specific quality of life role function-restrictive domain(MSQ RF-R)スコア、片頭痛障害評価尺度(MIDAS)スコアを含めた。安全性アウトカムには、注射部位の痛み、鼻咽頭炎、上気道感染症の頻度を含めた。研究のバイアスリスク評価には、Cochrane Collaboration's risk of bias toolを用いた。統計分析には、Review Manager Software ver. 5.4.1を用いた。平均差およびリスク比、95%信頼区間の分析には、それぞれ連続分析、2値分析を用いた。同種データと異種データの分析には、それぞれ固定効果モデルと変量効果モデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・6研究4,023例が抽出された。
・ガルカネズマブ 120mgおよび240mgは、プラセボと比較し、MHDの減少(p<0.001)、急性期薬物治療によるMHDの減少(p<0.001)、PGI-Sスコアの改善(p<0.001)に対し有意に高い効果が認められた。
・MSQ RF-RスコアおよびMIDASスコアは、ガルカネズマブ 240mgでのみ有意な改善が認められた(p<0.001)。
・副作用に関しては、注射部位の痛みおよび鼻咽頭炎の割合は、ガルカネズマブ 120mgおよび240mgとプラセボとの間に違いは認められなかった。
・しかし、ガルカネズマブ 120mgは、プラセボと比較し、上気道感染症の頻度が高かった。この関係は、ガルカネズマブ 240mgでは認められなかった。
著者らは「ガルカネズマブは、片頭痛のマネジメントにおいて、臨床的に安全かつ効果的であり、高用量での使用によりその有効性はさらに高まる。今後の研究は、片頭痛のマネジメントに対するガルカネズマブの最適な用量を検討することに向けられるべきである。また、ほかの抗CGRP受容体モノクローナル抗体との直接比較研究が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)