日本人高齢者の趣味の種類や数と認知症リスクとの関係

提供元:ケアネット

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公開日:2021/02/02

 

 認知症予防は、超高齢化社会を迎える現代社会において重要な問題である。これまでの研究では、趣味(とくにガーデニング、旅行、スポーツ)を有する高齢者では、認知症リスクが低いことが示唆されている。しかし、趣味の種類や数の違いが認知症予防に影響を及ぼすかは、よくわかっていない。千葉大学のLing Ling氏らは、趣味の種類および数と認知症発症との関連を調査した。日本公衆衛生雑誌2020年号の報告。

 2010~16年に日本老年学的評価研究(JAGES)が実施したプロスペクティブコホート研究より、年齢、性別が明らかな65歳以上の要介護認定を受けていない高齢者5万6,624人を調査した。趣味に関連する質問に回答した患者のうち、365日以上フォローアップできた4万9,705人について分析を行った。主要アウトカムは、認知症の発症とした。認知症の発症は、厚生労働省の推奨する全国的に標準化された認知症スケールにより評価した。説明変数は、実践者の割合が5%以上の趣味の種類(男性:14種類、女性:11種類)およびその数(0~5種類以上)とした。共変量は、基本属性、疾患、健康行動、社会的サポート、心理・認知機能、日常生活動作とした。合計22の変数を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、4,758人(9.6%)であった。
・認知症発症リスクの低下と関連していた趣味は以下のとおりであった。
【男女とも】
●グラウンドゴルフ(HR:0.80[男性]、HR:0.80[女性])
●旅行(HR:0.80[男性]、HR:0.76[女性])
【男性のみ】
●ゴルフ(HR:0.61)
●パソコン(HR:0.65)
●釣り(HR:0.81)
●写真(HR:0.83)
【女性のみ】
●手工芸(HR:0.73)
●ガーデニング(HR:0.85)
・男女ともに、趣味の数が増加するほど認知症リスクが低下する有意な傾向が認められた(HR:0.84[男性]、HR:0.78[女性])。

 著者らは「グラウンドゴルフや旅行を趣味とする高齢者は、男女ともに認知症リスクが低く、また趣味の数が増加するほどリスクが低下することが示唆された。高齢者がさまざまな趣味を実践できる環境づくりを行うことは、認知症予防を効果的に進めるうえで重要である」としている。

(鷹野 敦夫)