LVEF15%以下の重症心不全患者に対するCRTの効果【Dr.河田pick up】

提供元:ケアネット

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公開日:2021/02/26

 

 心臓再同期療法(CRT)は、心室同期不全および左室機能不全を有する患者に対する最も重要な治療の1つである。多くのCRTに関連した研究における患者の左室駆出率(LVEF)の平均値は20~30%である。実臨床では、さらにLVEFが低下した患者によく遭遇する。こうした重度の左室機能不全を有する患者がCRTの恩恵を受けるのか、あるいはすでにCRTが有益である時点を過ぎた患者なのかは不明である。本研究は、米国・クリーブランドクリニックのJohn Rickard氏らが、重症心筋症に対するCRTの長期成績とLVEF回復の予測因子を求めることを目的に実施した。JACC electrophysiology誌2021年1月号に掲載。

重症心不全(LVEF≦15%)患者420例が対象、レスポンダーは48.7%

 2003年4月~2014年5月までの間に、クリーブランドクリニックとジョンズホプキンス大学系列の病院2施設において、LVEF≦15%かつQRS≧120msの心不全に対し、CRTの植込みを受けた患者420例の臨床および心エコーのデータを収集し、多変量解析を実施。CRTレスポンダーとなる因子を求めた。レスポンダーの定義は、LVEF>5%(絶対値)の改善、LVADの植込みおよび心移植が行われていないこととした。また、手技に関連した死亡のデータも集められた。

 420例中298例が、事前および適切なタイミングで心エコーを受けており、うち145例(48.7%)がレスポンダーの基準を満たした。多変量解析では、左室のサイズと左脚ブロックがレスポンダーの予測因子であった。左室拡張末期径(LVEDD)の五分位に分けられたグループのうち、最も大きい拡張末期径を有するグループでは、30.4%がレスポンダーとなった。多変量解析では、小さい左室拡張末期径と左脚ブロックが、フォローアップ期間(平均5.2年)における心不全およびLVAD植込みを回避することの予測因子であった。手技と関連した死亡は認められなかった。

左脚ブロックと左室拡張末期径が小さいことが予測因子となる

 重症左室機能低下の心不全患者はCRTが奏効するが、その率は従来のCRT候補患者よりも低かった。左室のサイズが小さいことおよび左脚ブロックが、良好な予後につながる重要な予測因子であった(レスポンダー 左脚ブロック54.3%、右脚ブロック20.0%、非特異的心室伝導障害45.1%、ペーシング46.8%)。
 最も左室が拡張した患者群においても、CRTによって30.4%の患者のLVEF改善が見られた。また、CRTの植込みに関連した手技で致死的な合併症は見られなかった。

 現実問題として、左脚ブロックがあり、LVEFが悪い患者は、左室の拡大がいくら進行していても、CRTを試さないわけにはいかないであろう。ただこの研究は、CRTを植込まなかった群との比較ではないので、左室が拡大してしまった群での30.4%という数値の中に、どれだけCRTによる改善が含まれているかは不明である。薬物治療、心臓リハビリなどでも心機能が改善する可能性がある。また、心エコーによる5%の改善というのも、誤差の範囲に含まれるため、解釈には注意が必要である。大切なことは、LVEFが低くても、右脚ブロックでなければ、CRTで40~50%の患者でレスポンスが見込まれるということであろう。

(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)