術後再発高リスク因子(切除断端陽性、リンパ節外浸潤)を有する進行頭頸部扁平上皮がんに対する術後補助療法の標準治療は、CDDPを3週ごとに同時併用する化学放射線療法(3wCDDP+RT)である。しかし、毒性の強さ、治療のコンプライアンス、長期入院の必要性、術後の手術部位感染の懸念などから普及せず、毒性の軽い CDDPを毎週投与する化学放射線療法(wCDDP+RT)が頻用されている。ただし、wCDDP+RTのエビデンスは不足しており、標準治療である3wCDDP+RTとの無作為化比較試験も行われていない。国立がん研究センター東病院の田原 信氏らは術後再発高リスク因子を有する頭頸部扁平上皮がんを対象とした世界初となる3wCDDP+RTとwCDDP+RTとの無作為化比較試験を実施し、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)で発表した。
・対象:術後再発高リスク因子(切除断端陽性、リンパ節外浸潤)の扁平上皮頭頸部がん患者(ECOG PS 0〜1、年齢20〜75歳)
・試験群:CDDP(40mg/m2)+放射線(66Gy/33Fr)(wCDDP+RT群)
・対象群:CDDP(100mg/m2)3週ごと+放射線(66Gy/33Fr)(3wCDDP+RT群)
・評価項目:第II相部分は治療完遂割合、第III相部分は全生存期間(OS)
試験治療群の標準治療群に対する非劣性ハザード比(HR)の閾値は1.32と設定された。
主な結果は以下のとおり。
・2012年10月〜2018年12月に261 例が登録され、3wCDDP+RT群 132 例、wCDDP+RT群 129 例に割り付けられた。
・観察期間中央値2.2年での3年OS率は、3wCDDP+RT群59.1%、wCDDP+RT群71.6%であった(HR:0.69、99.1%CI:0.37〜1.27、片側非劣性p=0.00272)。非劣性HRの閾値1.32に対して層別Cox 回帰モデルから得られた片側p値は、多重性を考慮したα=0.00433を下回ることから非劣性が証明された。
・3年無再発生存期間は3wCDDP+RT群53.0%、wCDDP+RT群64.5%であった(HR:0.71、95%CI:0.48〜1.06)。
・急性毒性としては、Grade3以上の好中球減少(3wCDDP+RT群48.8%対wCDDP+RT35.3%)、Grade2以上のクレアチニン上昇(8.5%対5.7%)、Grade2以上の難聴(7.8対2.5%)、Grade2以上の粘膜炎(55.0%対50.0%)が認められ、その毒性頻度はwCDDP+RT群において低かった。
第III相部分における2回目の中間解析において、OSにおけるwCDDP+RT群の非劣性が証明されたことから、効果・安全性評価委員会から試験中止、結果の公表が勧告された。wCDDP+RTは、3wCDDP+RTに対し非劣性であることが示され、毒性プロファイルも良好であったことから、Weekly CDDP+RT療法が新たな標準治療と認識される、との見解を示している。
(ケアネット 細田 雅之)