コリンエステラーゼ阻害薬で治療した認知症高齢者における抗精神病薬の使用~コホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2021/04/30

 

 認知症に関連する行動症状のマネジメントのために抗精神病薬が用いられるが、各コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)と抗精神病薬使用開始との関連に関するエビデンスは不足している。米国・ヒューストン大学のSanika Rege氏らは、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンで治療された認知症高齢者における抗精神病薬使用開始リスクの比較を行った。Drugs & Aging誌オンライン版2021年3月25日号の報告。

 パートA、B、Dを含む2013~15年のメディケアクレームデータを用いて、レトロスペクティブに検討を行った。対象は、認知症と診断された65歳以上の地域在住高齢者。ChEIの新規使用患者を特定し、抗精神病薬の使用開始について最大180日間フォローした。ChEIはドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、抗精神病薬は定型および非定型抗精神病薬を含めた。ドネペジルは、最も一般的に使用されている薬剤であり、アセチルコリンエステラーゼのみに作用することから、参照カテゴリーとして用いた。他のリスク因子で調整した後、3種類のChEIにおける抗精神病薬使用開始リスクと開始までの期間を比較するため、多変量Cox比例ハザード解析を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・新規でChEIを開始した認知症高齢者は、17万8,441例であった。
・各ChEIにおける抗精神病薬使用開始率は、以下のとおりであった。
 ●ドネペジル:15.14%(2万3,433例)
 ●リバスチグミン:19.04%(4,114例)
 ●ガランタミン:15.77%(324例)
・各ChEIにおける抗精神病薬使用開始までの平均期間は、以下のとおりであった。
 ●ドネペジル:109.29±69.72日
 ●リバスチグミン:96.70±71.60日
 ●ガランタミン:104.15±72.53日
・Cox回帰分析では、リバスチグミンは、ドネペジルと比較し、抗精神病薬使用開始リスクが有意に高いことが確認された(調整ハザード比:1.27、95%CI:1.20~1.34)。ガランタミンとドネペジルとの間に有意な関連は認められなかった(調整ハザード比:0.98、95%CI:0.81~1.20)。

 著者らは「リバスチグミン使用患者は、ドネペジル使用患者と比較し、抗精神病薬使用開始リスクが27%増加することが確認された。一方、ガランタミンはドネペジルと同等であった。研究の限界を考慮する必要はあるものの、認知症高齢者に対する抗精神病薬使用リスクを抑制するためには、ドネペジルまたはガランタミンによる治療が有用である可能性が示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)