ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)の進行乳がんに対する国際共同大規模臨床試験PALOMA-3(パルボシクリブ+フルベストラント併用療法)の長期追跡結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Robert H. Lurie Comprehensive Cancer Center of Northwestern UniversityのMassimo Cristofanilli氏から発表された。
PALOMA-3の6年以上の観察期間でもOS改善が持続
PALOMA-3試験は二重盲検の第III相無作為化比較試験であり、2018年にその試験プロトコールに則った結果発表がなされており、今回はその後の長期予後追跡結果の報告である。
・対象:アジュバントまたは進行がんに対する内分泌療法施行中あるいは施行後に増悪したHR+/HER2-の乳がんの女性(閉経状況は問わず)
・試験群:パルボシクリブ(125mg1日1回内服、3週連続投与、1週休薬)+フルベストラント(500mgをDay1、15、29に筋注):Palbo群347例
・対照群:プラセボ(3週投与1週休薬)+フルベストラント:Fulve群174例
進行がん治療としての化学療法は1レジメンまで許容(34%に化学療法治療歴あり)
・評価項目:
[主要評価項目]主治医評価による無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率、安全性、奏効期間
PALOMA-3の主な長期追跡結果は以下のとおり。
・プロトコールで規定された最終的なOS解析(観察期間中央値44.8ヵ月)では、その中央値はPalbo群で34.9ヵ月、Fulve群で28.0ヵ月、ハザード比(HR)0.81(95%信頼区間[CI]:0.64~1.03)、p=0.0429(片側検定)と、事前既定の閾値に達せず、統計学的な有意差は検出されなかった(2018年の既報)。
・今回は観察期間中央値73.3ヵ月時点での結果が報告された(データカットオフは2020年8月)。
・OS中央値は、Palbo群で34.8ヵ月(95%CI:28.8~39.9)、Fulve群で28.0ヵ月(95%CI:23.5~33.8)、HR 0.81(95%CI:0.65~0.99)、p=0.0221(nominal 1-side検定)であった。
・5年時のOS率は、Palbo群で23.3%、Fulve群で16.8%であった。
・進行乳がんに対する化学療法(CT)治療歴の有無別にOSを検討したところ、CT治療歴なしの症例(全体の66%)でのOS中央値はPalbo群で39.3ヵ月、Fulve群で29.7ヵ月、HR 0.72(95%CI:0.55~0.94)であった。CT治療歴ありの症例(全体の34%)でのOS中央値はPalbo群24.6ヵ月、Fulve群24.3ヵ月、HR 0.97(95%CI:0.69~1.36)であった。
・血清解析に同意した195例を対象に、血中循環腫瘍DNA(ct-DNA)を用いて、
ESR1、
PIK3CA、
TP53などの17遺伝子について解析した結果、
ESR1、
PIK3CA、
TP53の遺伝子変異によらず、OSに関するパルボシクリブの上乗せ効果が確認された。
・新たな安全性の問題は認められなかった。
Cristofanilli氏は「ホルモン治療で病勢進行となったHR+/HER2-乳がん患者へのパルボシクリブ+フルベストラントの併用療法は、6年以上の観察期間を経てもOSの改善がみられた。これは、とくに内分泌療法に感受性のある患者や前治療に化学療法が使用されていない患者で顕著であり、これまでの本治療法の有用性をサポートするものである」と締めくくった。
(ケアネット)