アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)による治療では、過活動膀胱(OAB)の治療のために抗ムスカリン薬による治療を開始しなければならないリスクが増加することが知られている。米国・ヒューストン大学のPrajakta P. Masurkar氏らは、認知症高齢者におけるAChEI治療と抗ムスカリン薬処方カスケードとの関連を調査した。Drugs & Aging誌オンライン版2021年5月24日号の報告。
対象は、AChEI(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)治療を行った65歳以上の認知症高齢者。2005~18年の米国TriNetXレセプトデータベースを用いて、レトロスペクティブコホートを実施した。2006年1月~2018年6月に各AChEIを使用開始した患者を確認した(ウォッシュアウト期間:1年間)。AChEI使用開始前1年に抗ムスカリン薬の使用またはOAB診断を受けた患者は除外した。主要アウトカムは、AChEI使用開始6ヵ月以内の抗ムスカリン薬の使用とした。AChEI治療と抗ムスカリン薬処方カスケードとの関連の評価には、いくつかの共変量でコントロールした後、Cox比例ハザードモデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者は、4万7,059例。
・薬剤別のAChEI使用率は、ドネペジル83.1%、リバスチグミン12.3%、ガランタミン4.6%であった。
・抗ムスカリン薬の使用またはOAB診断を受けた患者は、全体で8.16%であった。
・AChEI使用開始6ヵ月以内に抗ムスカリン薬を使用した患者は、1,725例(3.7%)であった。薬剤別では、ドネペジル3.9%、リバスチグミン2.6%、ガランタミン2.9%であった。
・Cox比例ハザード分析では、ドネペジル使用患者は、リバスチグミン使用患者と比較し、抗ムスカリン薬使用リスクが高かった(調整ハザード比:1.55、95%CI:1.31~1.83)。
・調査結果は、感度分析において一貫していた。
著者らは「ドネペジルは、リバスチグミンと比較し、抗ムスカリンカスケードを起こすリスクが高いことが示唆された。認知症における抗ムスカリンカスケードの潜在的な影響を明らかにするためには、今後の研究が必要とされる」としている。
(鷹野 敦夫)