筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)を対象に、シスプラチン+ゲムシタビン+ニボルマブ併用投与の有用性評価と、膀胱温存が可能な症例の予測に関する報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Icahn School of Medicine at Mount SainaiのMatthew D. Galsky氏よりなされた。
本試験(HCRN GU16-257)は米国で行われた多施設共同第II相試験である。MIBCでは、プラチナベースの術前化学療法により30~40%の症例が病理学的完全奏効(pCR)を得られることと、そのpCR症例は予後良好であることが知られているが、そのpCRが明らかになるのは膀胱摘除後である。また過去のレトロスペクティブ研究によると、その10年生存率は膀胱全摘65%、部分切除73%、切除なし75%と大きな差はなく、部分切除例では53%、切除なし例では61%が、膀胱温存したままで10年生存を得ていたという報告がある。
・対象:シスプラチン(CDDP)の投与適格のcT2-4a/N0/M0のMIBC
・介入:CDDP+ゲムシタビン+ニボルマブ 4サイクル(GC+Nivo)臨床的完全奏効(cCR)症例はニボルマブの追加投与(4ヵ月)、その後局所再発をきたした時点で膀胱摘除術実施。Non-cCR症例は膀胱摘除術を実施
・評価項目
[主要評価項目]cCRの割合、治療ベネフィット予測因子としてのcCRの可能性評価(2年間の無転移生存、または膀胱摘除時にpCRが確認された場合を治療ベネフィットとした)
[その他評価項目]初診時のTURBT検体におけるDNA損傷修復関連遺伝子(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)変異およびTMBとcCRの相関性
主な結果は以下のとおり。
・2018年8月~2020年11月に76例が登録された。年齢中央値69歳、男性79%、臨床病期はcT2が57%、cT3が32%、cT4が12%であった。
・4サイクルの薬物治療を完遂できたのは64例で、48%(31例)がcCRを達成した。
・cCR達成31例中30例が膀胱温存。残りの1例とNon-cCR症例(33例)が膀胱摘除術を受けた。
・cCR獲得後の膀胱温存症例では8例に局所再発が認められ、6例に膀胱摘除術が施行された。その際、50%は病理学的ステージがpT1N0以下であった。
・Non-cCR症例で膀胱摘除術を受けた症例の36%がpT1N0以下で、32%がpN+であった。
・有害事象プロファイルは、他のGC+Nivo試験での報告と同様であった。
・TMB高値(≧10mut/Mb)と、ERCC2変異でcCRまたはpCRとの相関が認められた(いずれもp=0.02)。
最後に発表者は、MIBCに対するGC+Nivo療法は、cCRを達成できるレジメンであり、このcCRが膀胱を温存したままでの長期の無再発生存につながる可能性がある、と述べた。
(ケアネット)