脳卒中の兆候は10年前から表れているかもしれない。オランダ・Erasmus MC University Medical CenterのAlis Heshmatollah氏らが、脳卒中を起こした患者における発症前10年間の認知機能と日常生活動作(ADL)の軌跡、および脳卒中のない人の対応する軌跡を調査した。その結果、脳卒中を起こした患者は、そうでない人と比較して、過去10年間で認知機能とADLの急激な低下が見られた。Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry誌2021年7月6日号に掲載。
研究者らは、1990~2016年の間、オランダの人口ベースのコホート「ロッテルダム研究」から、45歳以上の参加者1万4,712人を対象に、認知機能(MMSE、15-Words Learning、Letter-Digit Substitution、Stroop、Verbal Fluency、Purdue Pegboard)および基本的ADL・手段的ADL(BADL・IADL)を、4年おきに評価した。脳卒中の発症は、2018年までの医療記録を継続的に監視することで評価され、脳卒中のある者とない者を、性別および出生年に基づいて(1:3)でマッチングした。それぞれに対応する軌跡は、調整された線形混合効果モデルを使用して構築された。
主な結果は以下のとおり。
・12.5±6.8年の平均追跡期間中に、計1,662例の参加者が、初めての脳卒中を経験した。
・脳卒中を発症した患者は、脳卒中のない対照群よりもすべての認知機能テストで悪いスコアを示した。認知機能およびBADLは脳卒中が診断される8年前に、IADLは7年前に、脳卒中のない対照群の軌跡から逸脱し始めた。
・各スコアで見られた有意な逸脱は、MMSEで脳卒中発症の6.4年前、Stroopは5.7年前、Purdue Pegboardは3.8年前、IADLは3年前、BADLは2.2年前だった。
研究者らは、「われわれの発見は、脳内病変の蓄積が脳卒中の発症前に、すでに臨床的影響を及ぼしている可能性を示唆している」と結論している。
(ケアネット 堀間 莉穂)