HSCT患者、ワクチン2回目接種後に高い免疫応答示す

提供元:ケアネット

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公開日:2021/08/02

 

 造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者のCOVID-19感染症の予後は不良であるとの報告がある1),2)。318例のHSCT患者(同種造血幹細胞移植184例、自家造血幹細胞移植134例)を対象とした大規模多施設試験におけるCOVID-19感染診断後30日時点での全生存率は、同種造血幹細胞移植68%(95%CI:58~77)、自家造血幹細胞移植67%(55~78)と厳しい結果だった3)。免疫不全患者はmRNAワクチンの初期の治験からから除外されていたため、この集団におけるワクチンの有効性を評価する必要がある。Lancet誌2021年7月24日号CORRESPONDENCEに掲載。

 対象は、同種造血幹細胞移植を受けてから中央値23ヵ月(範囲:3~213[IQR:9~30])後にBNT162b2(ファイザー製)の2回接種(4週間隔)を受けた88例。2回目接種から中央値28日(IQR:26~31)後の免疫原性を、スパイクタンパク質に対するヒト抗体(IgG[S-RBD])で評価した。69例(78%)が評価可能で、3例は検出されたが評価できず、16例は検出されなかった。また、88例中7例にSARS-CoV-2感染歴があった。

 ワクチン効果の代替指標として、IgG価4,160AU/mL以上または未満でサンプルを層別化した。この閾値以上(n=52)と未満(n=36)の特徴を比較したところ、閾値以上は、同種造血幹細胞移植からワクチン接種までの期間が12ヵ月以上であること、ワクチン接種時の末梢血の絶対的リンパ球数が1,000/μL以上であることが相関していた。

 一方、ワクチン接種後3ヵ月以内に全身性免疫抑制剤を投与された患者は、IgG価が閾値以下であった。ワクチン接種後3ヵ月以内に全身性免疫抑制剤を投与されたことと、末梢血のリンパ球数が1,000/μL未満であったことは、多変量解析においてもIgG価の低さと相関関係があったが、同種造血幹細胞移植からワクチン接種までの期間には相関関係を見出せなかった。初回接種後の追跡調査期間中央値は84日(範囲:44~121[IQR:65~110])で、このコホートにおいてCOVID-19の感染は観察されなかった。

 今回、初めて同種造血幹細胞移植患者を対象に2回のワクチン接種後の免疫原性を評価したところ、全体的に頻繁かつ高レベルの液性応答が観察された。これは長期間の薬理的免疫抑制を受けている固形臓器移植患者における最近の観察結果とは対照的だった4)。今回の結果は、同種造血幹細胞移植を受けた患者への大規模なワクチン接種を支持するものだが、感染に対する免疫学的保護のレベルを明らかにするためには、さらに多施設共同の長期研究が必要であり、免疫応答の低い患者に対する3回目のワクチン接種の効果を検討することも考慮に入れる必要がある。

(ケアネット 杉崎 真名)