8月2日、政府から感染急増地域における入院の対象を重症者や重症化リスクの高い者に重点化し、それ以外は自宅療養を基本とする方針が示されたことについて、日本医師会の中川 俊男会長は8月4日の定例会見で、入院の判断は医師によって適切に行われるべきであり、宿泊療養を強化するほうが効率的な地域もあるとの見解を示した。
中等症IIおよび中等症Iのうち高リスク患者は医師判断で入院を
中等症II(呼吸不全あり:SpO
2≦93%)はもちろん、中等症I(呼吸不全なし:93%<SpO
2<96%)についても、現場の医師が重症化リスクが高いと判断した場合は、入院の対象とすべきとの考えを強調。8月3日に行われた政府との意見交換会においてこの見解を伝え、菅首相および田村厚生労働大臣からは、「重症化する患者さんに必要な医療が提供できることが大変重要であり、医師の判断の元に対応いただきたい」との明確な回答を得ているとした。
8月3日付けの厚労省からの事務連絡では、「入院治療は、重症患者や、中等症以下の患者の中で特に重症化リスクの高い者に重点化することも可能である」とされているが、中等症IIおよび中等症Iのうち重症化リスクが高い患者については、これまで通り医師の判断で入院治療が行われるよう、それらを明記した新たな通知あるいは事務連絡の発出を要望した。
自宅療養への急激なシフトには懸念、地域の実情に応じ宿泊療養も活用を
7月30日付けの事務連絡において、自宅・宿泊療養を行っている者に対し、往診料または在宅患者訪問診療料を算定した日に救急医療管理加算1(950 点)の算定が可能となっている。意見交換会においても政府から、往診やオンライン診療強化の要請があったとし、中川会長は地域の実情に応じて健康観察の工夫を重ねており、今後も強化するとしたうえで、地域によっては宿泊療養を強化するほうがより効率的な場合もあると指摘。
政府がとくに家庭内感染のリスクのない独居者に自宅療養を基本としている点について、むしろ独居者の不安は計り知れず、また往診やオンライン診療に対応することは通常の診療よりも時間がかかり、自宅療養への急激なシフトは患者さんにとっても医療機関にとっても負担が大きくなりかねないと指摘した。
日本医師会としては、中小民間病院を含め全国の医療機関と地域医師会において、軽症・中等症患者の病状変化に即座に対応できるよう体制整備をすでに進めており、とくに自宅療養に対する体制整備を強化していると話した。
抗体カクテル療法を外来でも活用可としていく方向
意見交換会では、政府から抗体カクテル療法を外来でも使用していく方向性が示されたといい、日本医師会としては、十分な供給量を確保したうえでの入院患者以外への使用に同意したと中川会長。併せて現在は特例承認の状況であり、安全性についての慎重な検討が必要であるとの見解を示し、投与後一定期間の経過観察が可能な病院などにおいて外来での使用の知見を早急に蓄積・検証し、外来や在宅でも柔軟な使用ができるように要請したことを明らかにした。
(ケアネット 遊佐 なつみ)