幻聴は、統合失調症の診断において重要な症状であり、非常に頻度が高く、症状悪化に影響を及ぼす精神症状の1つである。しかし、幻聴の長期的な軌跡についてはあまり知られていない。デンマーク・コペンハーゲン大学のOle Kohler-Forsberg氏らは、初発統合失調症における幻聴について、10年間のフォローアップ調査を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年7月13日号の報告。
対象は、初発統合失調症スペクトラム障害患者496例。幻聴スコアは、0(なし)~5(重度:毎日頻繁に出現)の評価を用いて、ベースライン時および1、2、5、10年後に調査した。幻聴の軌跡の特定には潜在クラス成長分析を用い、予測因子の推定には多項ロジスティック回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・幻聴の軌跡は、低減少クラス(77%)、高変動クラス(10%)、高増加クラス(13%)の3つが特定された。
・低減少クラスでは、ベースライン時の平均幻聴スコアが最も低かった(平均スコア:2.1)。幻聴スコアの改善は、最初の1年以内に認められ(1年後の平均スコア:0.5)、その後も維持された(10年後の平均スコア:0)。
・高変動クラスでは、最初の2年間で平均幻聴スコアが3.0→1.0へ改善が認められたが、5、10年後には増加に転じていた(平均スコア:2.4)。
・高増加クラスでは、ベースライン時の平均幻聴スコアが高く(平均スコア:3.5)、1年後にはわずかな減少が確認されたものの(1年後の平均スコア:3.0)、10年後には増加していた(10年後の平均スコア:4.8)。
著者らは「統合失調症スペクトラム障害患者の多くは、10年後までに幻聴の改善が認められるが、4人に1人は症状の変動がみられ、13%の患者は10年後に重度の幻聴を有していることが明らかとなった」としている。
(鷹野 敦夫)