新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。
首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。
主な結果は以下のとおり。
・134万5,457人月のフォローアップ期間中(平均:32.0±7.5ヵ月、中央値:35ヵ月)に新たに抗認知症薬を使用した患者は、2,365人(5.6%)であった。
・12ヵ月間の新規抗認知症薬使用率は、1.9±0.1%(1群:0.9±0.1%、2群:2.1±0.1%、3群:3.2±0.2%、4群:3.6±0.3%、p<0.0001)であった。
・高齢および女性に加え、以下の薬剤の使用は、新規抗認知症薬使用と有意な関連が認められた。
●スタチン(HR:0.82、95%CI:0.73~0.92、p=0.001)
●降圧薬(HR:0.80、95%CI:0.71~0.85、p<0.0001)
●非ステロイド性気管支拡張薬(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88、p=0.002)
●抗うつ薬(HR:1.79、95%CI:1.47~2.18、p<0.0001)
●脳卒中後の治療薬(HR:1.45、95%CI:1.16~1.82、p=0.002)
●インスリン(HR:1.34、95%CI:1.01~1.78、p=0.046)
●抗腫瘍薬(HR:1.12、95%CI:1.01~1.24、p=0.035)
著者らは「本レトロスペクティブコホート研究により、高齢者における慢性疾患に対する治療薬と新規抗認知症薬使用との関連が特定された。これらの結果は、実臨床における認知症の臨床診断や医療政策を立案するうえで役立つであろう」としている。
(鷹野 敦夫)