妊娠前の睡眠時間と産後うつ病~日本での多施設共同研究

産後うつ病は、世界における主要な公衆衛生上の問題であり、臨床的優先事項として挙げられている。名古屋大学の松尾 聖子氏らは、妊娠前の睡眠時間と産後うつ病との関連について、調査を行った。Archives of Women's Mental Health誌オンライン版2021年7月13日号の報告。
日本の産婦人科病院12施設より収集した2014~18年に出産した女性の臨床データを用いて、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。対象女性1万5,314人を妊娠前の睡眠時間に応じて5群に分類した(6時間未満、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9時間以上)。妊娠前の睡眠時間が産後1ヵ月間のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)のスコアに影響を及ぼすかを判断するため、単変量および多変量回帰分析を行った。また、産後うつ病リスクが、妊娠前の睡眠時間に応じて分類された女性において、以前の出産経験の有無により異なるかについても評価した。
主な結果は以下のとおり。
・出産前の睡眠時間が6時間未満および6~7時間の女性における高EPDSスコア(9以上)の調整オッズ比(aOR)は、7~8時間の女性と比較し、以下のとおりであった。
●6時間未満のaOR:2.08(95%CI:1.60~2.70)
●6~7時間のaOR:1.41(95%CI:1.18~1.68)
・高EPDSスコアのリスクは、睡眠時間が1時間増加すると約14%減少した。
・睡眠時間の短さと高EPDSスコアとの関連は、初産の女性よりも出産経験のある女性のほうが顕著であった。
著者らは「妊娠前の睡眠時間の短さは、産後うつ病リスクと関連しており、この問題は、初産よりも出産経験のある女性において、より重要であった。産後うつ病リスクが高い女性を特定するためにも、妊娠前の睡眠時間に関する情報を収集する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)
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