若年性認知症の世界的有病率~メタ解析

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2021/09/01

 

 認知症の症状が65歳以前に発現する若年性認知症については、信頼できる推定有病率が明らかとなっていない。有病率の推定は、政策立案時に適切な医療環境を組織するうえで必要となる。オランダ・マーストリヒト大学のStevie Hendriks氏らは、若年性認知症の世界的有病率の推定を試みた。JAMA Neurology誌オンライン版2021年7月19日号の報告。

 1990年1月~2020年3月に公表された若年性認知症の有病率に関する人口ベースの研究を、PubMed、Embase、CINAHL、PsycInfoのデータベースよりシステマティックに検索した。65歳未満の認知症有病率に関するデータを含む研究を独立した2人のレビュアーによりスクリーニングし、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。30~34歳から60~64歳まで、5歳刻みの年齢層における若年性認知症の有病率を推定した。有病率の推定値をプールするため、変量効果メタ解析を実施した。結果は、世界標準人口による年齢調整を行った。性別、認知症サブタイプ、研究デザイン、世界銀行の分類に基づく経済状態によるサブグループ分析およびメタ解析により、不均一性を評価した。主要アウトカムは、5歳刻みの年齢層における若年性認知症の推定有病率とした。

 主な結果は以下のとおり。

・95件の研究についてシステマティックレビューを行い、74件(276万379例)をメタ解析に含めた。
・研究は、主に欧州で実施されており、アジア、北米、オセアニアでの研究は、より高年齢層が対象であった。
・人口10万人当たりの年齢調整推定有病者数は、30~34歳で1.1人、60~64歳で77.4人であった。
・30~64歳の人口10万人当たりの年齢調整推定有病者数は119.0人であり、世界の30~64歳の有病者数では390万人に相当する。
・サブグループ解析では、男女の有病率は類似していた。
 ●男性の粗推定値:人口10万人当たり216.5人
 ●女性の粗推定値:人口10万人当たりの293.1人
・一方、高所得国では、高中所得国および低中所得国と比較し、有病率が低かった。
 ●高所得国の粗推定値:人口10万人当たり663.9人
 ●高中所得国の粗推定値:人口10万人当たり1,873.6人
 ●低中所得国の粗推定値:人口10万人当たり764.2人
・メタ解析では、研究間の不均一性に年齢範囲(p<0.001)、サンプルサイズ(p<0.001)、研究デザイン(p=0.02)が有意な影響を及ぼしていることが示唆された。

 著者らは「30~64歳における若年性認知症の年齢調整推定有病率は、人口10万人当たり119.0人であることが本システマティックレビューおよびメタ解析により明らかとなったが、低所得国やより若年層での有病率を推定するには、依然として不十分なままであった。これらの結果は、政策立案時に適切な医療環境を組織するうえで役立つであろう」としている。

(鷹野 敦夫)