若年性認知症患者の生活には、その年代に合った社会的支援が求められる。最新情報を入手し、適切なサービスを提供するためには、疫学調査が必要である。東京都健康長寿医療センター研究所の粟田 主一氏らは、若年性認知症の有病率、サブタイプの内訳、患者が頻繁に利用するサービスを明らかにするため、調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2020年8月19日号の報告。
本研究は、マルチサイト人口ベース2ステップ研究として実施された。全国12地域(北海道、秋田県、山形県、福島県、茨城県、群馬県、東京都、新潟県、山梨県、愛知県、大阪府、愛媛県[対象となる人口:1,163万322人])の医療機関、介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所、相談機関などを対象にアンケートを実施した。ステップ1として、過去12ヵ月間で若年性認知症患者がサービス求めたかまたは滞在したかを調査した。ステップ1で「はい」と回答した施設に追加のアンケートの協力を求め、若年性認知症患者へ質問票を配布し、認知症サブタイプなどのより詳細な情報を収集した。
主な結果は以下のとおり。
・ステップ1では、1万6,848施設(63.8%)より有効な回答が得られ、若年性認知症患者4,077例が特定された。
・ステップ2では、施設から1,614例(39.6%)、患者から530例(13.0%)の詳細な情報が得られた。
・日本における若年性認知症の有病率は、人口10万人当たり50.9人(95%信頼区間:43.9~57.9、年齢範囲:18~64歳)と推定された。
・2018年時点での日本における若年性認知症の患者数は、3万5,700人と推定された。
・認知症サブタイプの内訳は、以下のとおりであった。
●アルツハイマー型認知症:52.6%
●血管性認知症:17.1%
●前頭側頭型認知症:9.4%
●頭部外傷による認知症:4.2%
●レビー小体型認知症・パーキンソン病による認知症:4.1%
●アルコール関連障害による認知症:2.8%
・若年性認知症は、認知症疾患医療センターで最も頻繁に診断されていた。
著者らは「本研究で推定された若年性認知症の有病率は、以前の研究結果と同等であった。しかし、認知症サブタイプの内訳は異なっており、アルツハイマー型認知症が最も多い結果となった。認知症疾患医療センターは、若年性認知症患者に質の高い診断と診断後のサポートを提供することにより、主要な特別医療サービスとして機能し続けることが期待される」としている。
(鷹野 敦夫)