慢性片頭痛に利用可能な予防的治療は、さまざまな有効性および安全性の問題により制限されている。片頭痛の病因に関連するカルシトニン遺伝子関連ペプチド経路を標的とするモノクローナル抗体であるフレマネズマブは、大規模な国際第III相臨床試験において、効果および忍容性の高さが確認されている。埼玉精神神経センターの坂井 文彦氏らは、日本人および韓国人の慢性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性および安全性について、評価を行った。Headache誌オンライン版2021年7月29日号の報告。
慢性片頭痛患者を対象にフレマネズマブのランダム化プラセボ対照試験を実施した。対象患者は、フレマネズマブ月1回投与群(初回675mg、4週目225mg、8週目225mg)、フレマネズマブ四半期ごと投与群(初回675mg、4週目プラセボ、8週目プラセボ)、プラセボ群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、初回投与後12週間での1ヵ月(28日)当たりの頭痛日数のベースラインからの平均変化量とした。
主な結果は以下のとおり。
・ランダム化された患者は571例のうち、安全性の分析には569例、全体の分析には566例を含めた。
・各群における12週間での1ヵ月当たりの中等度以上の頭痛日数の最小二乗平均変化は以下のとおりであり、フレマネズマブ群は、プラセボ群と比較し、頭痛日数の有意な減少が確認された。
●フレマネズマブ月1回投与群:-4.1±0.4日
●フレマネズマブ四半期ごと投与群:-4.1±0.4日
●プラセボ群:-2.4±0.4日
・頭痛日数の平均変化におけるプラセボ群との差は以下のとおりであり、フレマネズマブ群は、プラセボ群と比較し、有意な変化が認められた(各々対プラセボ、p<0.001)。
●フレマネズマブ月1回投与群:-1.7日(95%信頼区間[CI]:-2.54~-0.80)
●フレマネズマブ四半期ごと投与群:-1.7日(95%CI:-2.55~-0.82)
・フレマネズマブ群における1ヵ月当たりの中等度以上の平均頭痛日数が50%以上減少した患者(治療反応患者)の割合は、プラセボ群よりも高かった。また、急性薬物使用の減少や障害スコアの改善などの他の副次的評価項目でも、同様であった。
【治療反応患者の割合】
●フレマネズマブ月1回投与群:29.0%
●フレマネズマブ四半期ごと投与群:29.1%
●プラセボ群:13.2%
【急性薬物使用の減少(12週間のベースラインからの平均変化)】
●フレマネズマブ月1回投与群:-3.7±0.4
●フレマネズマブ四半期ごと投与群:-3.9±0.4
●プラセボ群:-2.4±0.4
【障害スコアの改善(12週間のベースラインからの6項目頭痛インパクトテストスコアの平均変化)】
●フレマネズマブ月1回投与群:-8.1±0.7
●フレマネズマブ四半期ごと投与群:-8.0±0.7
●プラセボ群:-6.5±0.7
・フレマネズマブは、プラセボと同様に注射部位の反応を含む有害事象の発生率において、許容範囲内であった。
【1つ以上の有害事象発現率】
●フレマネズマブ群合計:61.4%(232例)
●プラセボ群:61.8%(118例)
著者らは「フレマネズマブは、日本人と韓国人の慢性片頭痛患者の予防的治療において、効果的であり、忍容性は良好であった」としている。
(鷹野 敦夫)