慢性疼痛は、認知機能低下の初期に認められる指標である可能性があるといわれているが、広範囲の疼痛と認知機能低下や脳卒中リスクとの関連をシステマティックに調査した研究は、これまであまりなかった。中国・重慶医科大学付属第一医院のKanran Wang氏らは、慢性疼痛の一般的なサブタイプである広範囲の疼痛とその後の認知症、アルツハイマー型認知症および脳卒中との関連を調査した。Regional Anesthesia and Pain Medicine誌オンライン版2021年8月16日号の報告。
米国コミュニティベースのフラミンガム心臓研究のデータを用いてレトロスペクティブコホート研究を実施した。疼痛の状態は、1990~94年の単一時点で評価した。広範囲の疼痛は、フラミンガム心臓研究の疼痛ホムンクルスに基づき決定した。ベースライン時に認知症でなかった人を対象に、中央値で10年間(四分位範囲:6~13年)フォローアップを行った。広範囲の疼痛と認知症、アルツハイマー型認知症、脳卒中との関連を調査するため、比例ハザードモデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・広範囲の疼痛が認められた人は347人(14.1%)、認められなかった人は2,117人(85.9%)であった。
・すべての原因による認知症が認められた188人中、128人はアルツハイマー型認知症であった。
・フォローアップ期間中に脳卒中を発症した人は、139人であった。
・年齢や性別を含む多変量で調整後、広範囲の疼痛は以下のリスク増加との関連が認められた。
●認知症リスク43%増(HR:1.43、95%CI:1.06~1.92)
●アルツハイマー型認知症リスク47%増(HR:1.47、95%CI:1.13~2.20)
●脳卒中リスク29%増(HR:1.29、95%CI:1.08~2.54)
・65歳以上のサブグループにおいても、同様の結果が確認された。
著者らは「広範囲の疼痛は、すべての原因による認知症、アルツハイマー型認知症、脳卒中の発症リスク増加との関連が認められた」としている。
(ケアネット)