慢性疼痛の遺伝的リスクが抗うつ薬の有効性と関連

慢性疼痛とうつ病は高頻度で併発しており、治療が困難な場合も少なくない。これまでのオーストラリアのうつ病遺伝学研究では、併存疾患がうつ病の重症度の上昇、抗うつ薬治療効果の低下や予後不良と関連していることを報告した。オーストラリア・クイーンズランド大学のAdrian I. Campos氏らは、慢性疼痛の遺伝的リスクがうつ病の遺伝的要因に影響を及ぼし、抗うつ薬の有効性と関連しているかを評価した。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年7月16日号の報告。
対象は、オーストラリアのうつ病遺伝学研究の参加者1万2,863人。慢性疼痛とうつ病のゲノムワイド関連研究より、要約統計量を用いて多遺伝子リスクスコア(PRS)を算出した。PRSと10種類の抗うつ薬治療の有効性との関連を評価するため、累積リンク回帰を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・混合ロジスティック回帰では、慢性疼痛患者は、慢性疼痛の遺伝的傾向との有意な関連が認められたが(PainPRSOR:1.17[1.12~1.22])、うつ病の遺伝的傾向との関連は認められなかった(MDPRSOR:1.01[0.98~1.06])。
・抗うつ薬治療の有効性の低下と慢性疼痛またはうつ病の遺伝的リスクとの有意な関連が認められた。ただし、完全に調整されたモデルでは、PainPRS(aOR:0.93[0.90~0.96])の影響は、MDPRS(aOR:0.96[0.93~0.99])とは独立していた。
・これらの結果の頑健性を評価するため、感度分析を行った。
・うつ病の重症度の測定値(発症年齢、うつ病エピソード数、研究参加年齢とうつ病発症年齢の間隔)で調整した後、PainPRSと抗うつ効果が不十分な慢性疼痛患者との有意な関連は、依然として認められた(各々、0.95[0.92~0.98]、0.84[0.78~0.90])。
著者らは「これらの結果は、慢性疼痛の遺伝的リスクは、うつ病の遺伝的リスクとは独立して、抗うつ薬治療の有効性低下と関連していることを示唆しており、他の研究による関連文献と同様に、慢性疼痛を合併したうつ病サブタイプでは、治療が困難であると考えられる。このことからも、鎮痛薬と精神医学における生物学に基づいた疾患分類のフレームワークへの影響に関するさらなる調査が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)
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