米国食品医薬品局(FDA)は9月22日、ファイザー/ビオンテック社製COVID-19ワクチン(BNT162b2)の3回目接種(ブースター接種)について、65歳以上や重症化リスクの高い人などを対象に緊急使用許可を承認した1)。この承認に当たり開催されたFDAの諮問委員会でファイザー社が提出した資料2)には、ブースター接種による免疫応答と安全性についてのデータが含まれた。本稿では、安全性データについてまとめる。
※なお、9月30日更新の米国疾病予防管理センター(CDC)からの推奨事項では3)、BNT162b2ブースター接種の対象は、65歳以上、18歳以上の介護施設の居住者、基礎疾患のある者、リスクの高い環境で働く者、リスクの高い環境に住む者とされている。
対象:phase1試験から12人(65~85歳)、phase2/3試験から306人(18~55歳)
試験概要:参加者はBNT162b2 30μgの2回接種の後、phase1試験参加者は約7~9ヵ月後、phase2/3試験参加者は約6ヵ月後にBNT162b2 30μgの3回目接種を受けた。
安全性の評価:参加者はブースター接種後1日~7日目まで副反応と解熱鎮痛薬の使用についてe-diaryで報告した。副反応には、接種部位反応(痛み、発赤、腫れ)および全身性反応(発熱、倦怠感、頭痛、悪寒、吐き気、下痢、筋肉痛、関節痛)が含まれる。その他の安全性評価には、各投与後30分以内に発生する副反応、1回目投与からブースター接種後1ヵ月間の非重篤な未確認の副反応、およびブースター接種からデータカットオフ日(phase1:2021年5月13日、phase2/3:2021年6月17日)までの重篤な副反応が含まれた。
dose1(16~55歳、2,899人)、dose2(16~55歳、2,682人)のデータと比較したdose3接種後の副反応報告は以下のとおり。
・phase1試験の12人(65~85歳)、phase2/3試験の289人(18~55歳)からe-diaryによる報告が得られた。
接種部位反応
・痛み:dose1(83.7%)、2(78.3%)、3(18~55歳:83.0%、65~85歳:66.7%)
・腫れ:dose1(6.3%)、2(6.8%)、3(18~55歳:8.0%、65~85歳:0.0%)
・発赤:dose1(5.4%)、2(5.6%)、3(18~55歳:5.9%、65~85歳:0.0%)
全身性反応
・倦怠感:dose1(49.4%)、2(61.5%)、3(18~55歳:63.8%、65~85歳:41.7%)
・頭痛:dose1(43.5%)、2(54.0%)、3(18~55歳:48.4%、65~85歳:41.7%)
・筋肉痛:dose1(22.9%)、2(39.3%)、3(18~55歳:39.1%、65~85歳:33.3%)
・悪寒:dose1(16.5%)、2(37.8%)、3(18~55歳:29.1%、65~85歳:16.7%)
・関節痛:dose1(11.8%)、2(23.8%)、3(18~55歳:25.3%、65~85歳:16.7%)
・下痢:dose1(10.7%)、2(10.0%)、3(18~55歳:8.7%、65~85歳:0.0%)
・嘔吐:dose1(1.2%)、2(2.2%)、3(18~55歳:1.7%、65~85歳:0.0%)
・発熱(≧38.0℃):dose1(4.1%)、2(16.4%)、3(18~55歳:8.7%、65~85歳:0.0%)
・解熱鎮痛薬の使用:dose1(27.8%)、2(45.2%)、3(18~55歳:46.7%、65~85歳:33.3%)
ブースター接種から1ヵ月後までのphase2/3試験参加者(306人)において報告された副反応のうち、最も多かったのはリンパ節腫脹(5.2%)で、最初の2回(0.4%)よりも多かった。その他複数の参加者で報告されたのは、悪心(0.7%)、注射部位の痛み(0.7%)、痛み(0.7%)、腰痛(0.7%)、首の痛み(0.7%)、頭痛(0.7%)、 不安感(0.7%)、および接触性皮膚炎(0.7%)だった。
ブースター接種後1ヵ月以上が経過した後のモニタリング期間中に、1件の急性心筋梗塞が重篤な副反応として報告されたが、ファイザー社は因果関係は認められないと評価し、FDAもそれに同意している。その他の重篤な副反応、死亡例は報告されていない。
報告書では、ブースター接種後に報告された副反応の頻度および重症度は、2回目接種後と差がみられなかったとしている。
(2021年10月1日 記事内容を一部修正いたしました)
(ケアネット 遊佐 なつみ)