HER2陽性早期乳がんの術前補助療法としての化学療法とトラスツズマブ、ラパチニブの併用については、複数の試験で病理学的完全奏効(pCR)率の増加が確認されているが、生存に対する有効性については結果が一致していない。イタリア・パドヴァ大学のValentina Guarneri氏らは、同併用療法の生存に対するベネフィットについてメタ解析を実施し、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。
Guarneri氏らは、4つの無作為化比較試験(CHER-LOB、NSABP-B41、NeoALTTO、CALGB40601)から1,410例を本解析の対象とした。4試験の主な違いとしては、CHER-LOB、NSABP-B41試験では術前にアントラサイクリン系・タキサン系薬剤が使用されており、NeoALTTO、CALGB40601試験では術前にタキサン系、術後にアントラサイクリン系薬剤が使用された。またNeoALTTO試験のみ術後に試験時の薬剤が投与され、その他3試験ではトラスツズマブが投与された。
全試験でトラスツズマブ+ラパチニブ併用群のpCR率の増加がみられたが、生存に関する評価項目の有意な改善がみられたのはCALGB40601試験のみだった。
メタ解析の主な結果は以下のとおり。
・無再発生存期間(RFS)は、トラスツズマブ単独と比較してトラスツズマブ+ラパチニブ併用群で改善した(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]0.46~0.85)。また全生存期間も併用群で改善がみられた(HR:0.65、95%CI:0.43~0.98)。
・組み合わせたすべての治療において、pCRを達成した患者は、手術時に残存病変を有する患者よりもRFS(HR:0.45、95%CI:0.34~0.60)およびOS(HR:0.32、95%CI:0.22~0.48)が良好だった。
・ホルモン受容体陰性の患者では、pCRは再発リスクの65%減少(HR:0.35、95%CI:0.23~0.53)および死亡リスクの73%減少(HR:0.27、95%CI:0.15~0.47)と関連していた。
・ホルモン受容体陽性の患者も、pCRを達成した患者はRFSが改善(HR:0.60、95%CI:0.37~0.97)したが、その効果はホルモン受容体陰性の患者よりも小さかった。
Guarneri氏は、pCRが予後予測の強力なマーカーであることが確認され、この傾向はとくにホルモン受容体陰性の患者で強くみられるとした。さらにトラスツズマブ単独の場合と比較して、トラスツズマブ+ラパチニブの併用療法は生存に対するベネフィットを示し、pCRをサロゲートマーカーとして、ラパチニブの早期での使用を考慮すべきではないかとまとめている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)