既治療のKRAS G12C変異陽性進行大腸がん(CRC)患者において、KRAS G12C阻害薬adagrasibの単剤療法およびセツキシマブとの併用療法は、忍容性が良好で有効性が期待できることが「KRYSTAL-1試験」で示され、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のJared Weiss氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。
KRYSTAL-1試験は、KRAS G12C変異陽性の進行固形がん患者を対象とするマルチコホート第I/II相試験。
今回は、CRCを対象としたadagrasib単剤療法(第I/Ib相2例、第II相44例、データカットオフ日2021年5月25日、追跡期間中央値8.9ヵ月)、ならびにセツキシマブ併用療法(第Ib相32例、データカットオフ日2021年7月9日、追跡期間中央値7ヵ月)の中間解析が報告された。
・対象:KRAS G12C変異陽性の切除不能または転移CRC患者
・試験群:
単剤療法群adagrasib(46例)
併用療法群adagrasib+セツキシマブ(32例)
・評価項目:
[主要評価項目]第I/Ib相:安全性、第II相:奏効率(ORR)
[副次評価項目]第I/Ib相:ORR、奏効期間(DoR)など、第II相:安全性
主な結果は以下のとおり。
・単剤療法群、併用療法群のいずれも前治療ライン数中央値は3であった。
・KRAS G12C変異以外に、TP53変異陽性が単剤療法群で68%(23/34)、併用療法群で69%(18/26)に認められた。
[単剤療法群]
・ORRは22%(10/45例)、病勢制御率(DCR)は87%(39/45例)であった。
・奏効までの期間中央値は1.4ヵ月、DoR中央値は4.2ヵ月であった。
・無増悪生存期間(PFS)中央値は5.6ヵ月(95%信頼区間:4.1~8.3)、6ヵ月PFS率は42%であった。
・単剤療法群における治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、全Gradeが91%で、主なものは下痢(63%)、悪心(57%)、疲労(46%)、嘔吐(46%)であった。
[併用療法群]
・ORRは43%(12/28例)、DCRは100%であった。
・奏効までの期間中央値は1.3ヵ月であった。
・併用療法群におけるTRAE発現率は、全Gradeが100%で、主なものは悪心(63%)、下痢(56%)、嘔吐(50%)、疲労(47%)であった。また、セツキシマブに起因するざ蒼様皮膚炎が44%、皮膚乾燥が38%にみられた。
Weiss氏は、「前治療歴の多いKRAS G12C変異陽性の進行CRC患者において、adagrasib±セツキシマブは有望な臨床効果と良好な忍容性が認められた」と結果をまとめ、現在、KRAS G12C変異陽性大腸がんの2次治療としてのadagrasib+セツキシマブ併用療法の有効性および安全性を評価する第III相KRYSTAL-10試験が行われていることを紹介し発表を終えた。
(ケアネット)