adagrasibは、半減期が長く(23時間)、用量依存的な薬物動態を示し、中枢神経系への移行性を有するKRAS G12C阻害薬である。また、肝臓やその他の臓器部位に対するoff-target作用も少ないと考えられている。KRAS G12C変異を有する進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、adagrasibとペムブロリズマブの併用療法を検討したKRYSTAL-7試験が実施され、PD-L1高発現(TPS 50%以上)の患者において有望な結果が示された。本結果は、米国・シカゴ大学メディカルセンターのMarina Garassino氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。
試験デザイン:海外第II相試験
対象:未治療のKRAS G12C変異を有する進行・転移NSCLC患者148例
試験群:adagrasib(400mg、1日2回)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)
評価項目:
[主要評価項目]治験担当医師評価に基づく奏効率(ORR)
[副次評価項目]奏効期間(DOR)、治験担当医師評価に基づく無増悪生存期間(PFS)、安全性など
本発表では、PD-L1高発現(TPS 50%以上)の患者51例における有効性と治療を受けた全患者148例の安全性のデータが報告された。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者の年齢中央値は67歳、女性が48%であり、追跡期間中央値は8.7ヵ月であった(PD-L1高発現の患者の追跡期間中央値は10.1ヵ月)。
・PD-L1高発現の患者におけるORRは63%(CR:1例、PR:31例)、病勢コントロール率は84%であった。
・奏効までの期間中央値は1.4ヵ月、DOR中央値は未到達(95%信頼区間[CI]:12.6~推定不能)であった。
・PFS中央値は未到達(95%CI:8.2~推定不能)であり、1年PFS率は60.8%であった。
・全患者における主な治療関連有害事象(40例以上に発現)は、悪心(34.5%)、下痢(29.7%)であった。
・全Gradeの免疫関連有害事象(irAE)は18%、Grade3以上のirAEは5%に認められた。
・Grade5の治療関連有害事象が2例(1%)に認められ、内訳は肺臓炎、肺炎であった。
・adagrasibとペムブロリズマブの両剤の中止に至った治療関連有害事象は4%に認められた(adagrasibのみ中止:6%、ペムブロリズマブのみ中止:11%)。
・ALT/AST上昇やその他の肝関連の治療関連有害事象により両剤の中止に至った患者はいなかった。
本結果について、Garassino氏は「adagrasibとペムブロリズマブの併用療法は、PD-L1高発現のNSCLC患者における有望な有効性、管理可能な安全性プロファイルを示した。PD-L1高発現の患者におけるORRは63%であり、ペムブロリズマブ単剤によって得られると予測されるORR(39~45%)よりも良好であった。これらの結果は、未治療のKRAS G12C変異を有するPD-L1 TPS 50%以上の進行・転移NSCLC患者を対象として、adagrasibとペムブロリズマブの併用療法とペムブロリズマブ単剤療法を比較する第III相試験の開始を支持するものである」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)