ブレークスルー感染で重症化する患者の特性は何か。米国で行われた研究結果がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版9月7日号に掲載された。
イエール医科大学のPrerak V. Juthani氏らはイエール大学のヘルスケアシステムのデータを使い、SARS-CoV-2感染が確認された入院患者を対象としたシステマティックレビューを行った。2021年3月23日~7月1日にSARS-CoV-2で入院した患者(入院時にPCR検査で陽性)を対象とした。接種したワクチンはmRNA-1273(モデルナ製)、BNT162b2(ファイザー製)、Ad.26.COV2.S(Janssen製)で、ワクチンの完全接種は症状発現または検査陽性より少なくとも14日前にワクチン接種を完了(モデルナ製、ファイザー製は2回、Janssen製は1回)していること、とした。
主な結果は以下のとおり。
・イエール大学の関連病院に入院した969例の陽性患者のうち 172 例(18%)が入院時に少なくとも 1 回ワクチンを接種していた。このうち103例は部分接種(モデルナ製またはファイザー製1回)、15例は完全接種ながら接種から14日が経過しておらず、54例が完全接種でブレークスルー感染と認定された。
・ブレークスルー感染の54例の重症度を評価したところ、25例(46%)が無症状、4例(7%)が軽度、11例(20%)が中等度、14例(26%)が重症または重篤だった。
・重症・重篤患者の年齢中央値は80.5(IQR:76.5~85.0)歳で、14例中4例が集中治療を必要とし、1例が人工呼吸を必要とし、3例が死亡した。
・重症・重篤患者14例の既往症は、過体重(BMI25kg/m2以上、n=9)、心血管疾患(n=12)、肺疾患(n=7)、悪性腫瘍(n=4)、2型糖尿病(n=7)、免疫抑制剤の使用(n=4)などであった。14例中13例がファイザー製を接種していた。
著者らは、以下のようにまとめている。
・入院患者の5分の1が少なくとも1回のワクチン接種を受けていたが、その多くは完全接種ではなく、ワクチンの高い感染予防や重症化予防効果が確認された。
・ブレークスルー感染例の4分の1が重症化したことは、ワクチンの有効性を減じる変異株の出現や高齢、過体重、免疫抑制剤の使用などの合併症を持つ患者ではワクチンに対する免疫反応が効かないなど、さまざまな因子を反映していると考えられる。
・ファイザー製接種者はモデルナ製やJanssen製に比べ、ブレークスルー感染後の重症化例が多かった(2021年5月17日までにコネチカット州で配布されたワクチンはファイザー製135万8,175、モデルナ製104万4,420、Janssen製26万7,000)。
・今後の研究では、ブレークスルー感染者のワクチン応答が不十分である因子を特定し、緩和することが必要である。
(ケアネット 杉崎 真名)