日本人双極性障害患者における気分エピソードと就労との関連

提供元:ケアネット

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公開日:2021/11/08

 

 産業医科大学の近野 祐介氏らは、双極性障害患者の就労状況を改善するため、気分エピソードと就労との関係について調査を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年9月7日号の報告。

 2016年9月~10月に日本精神神経科診療所協会の会員クリニック176施設を受診した双極性障害患者のすべてのカルテデータを、2017年9月~10月に調査した。カルテデータの詳細は、就労状況を含む調査シートを用いて収集した。就労状況による気分エピソードのオッズ比(OR)を分析するため、ロジスティック回帰モデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・60歳以下の患者において、2,292例の職業を把握できた。
・単変量解析では、うつ病エピソードおよび躁病エピソードとの有意な関連が認められたが、混合エピソードでは認められなかった。
●うつ病エピソード(OR:2.68、95%CI:1.50~4.78、p=0.001)
●躁病エピソード(OR:2.64、95%CI:1.07~6.47、p=0.034)
●混合エピソード(OR:1.72、95%CI:0.69~4.33、p=0.246)
・多変量解析でも、同様の結果が認められた。
●うつ病エピソード(OR:2.16、95%CI:1.13~4.13、p=0.020)
●躁病エピソード(OR:3.55、95%CI:1.36~9.25、p=0.010)
●混合エピソード(OR:1.83、95%CI:0.65~5.14、p=0.254)

 著者らは「外来治療中の日本人双極性障害患者の就労率は、43.5%であった。寛解エピソードと比較し、うつ病および躁病エピソードを有する患者は、失業リスクが高いことが示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)