Webベースの認知症BPSDケアプログラムの普及促進のために

提供元:ケアネット

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公開日:2021/11/11

 

 COVID-19パンデミックとその結果引き起こされたソーシャルディスタンスの順守は、認知症患者の精神神経症状を誘発する可能性があるといわれている。東北大学の中西 三春氏らは、認知症の精神神経症状に対応するためのWebベースの心理社会的介入プログラムの有効性およびWebベースツールを利用する認知症介護者に対するeラーニングトレーニングコースの有用性を評価した。JMIR Medical Education誌2021年10月12日号の報告。

 本研究は、東京において準実験的研究として実施された。eラーニングコースは、2020年7月~12月に専門の介護者に対し3回実施した。コースを修了した介護者は、認知症患者の精神神経症状レベルを評価するため、Webベースツールを介したNeuropsychiatric Inventory(NPI)合計スコアを用いた。主要アウトカムは、2021年3月までNPI評価のフォローアップを実施した介護者数およびベースラインから最新の評価までのNPIスコアの変化とした。2019年7月~2020年3月に対面によるトレーニングコースを完了した専門の介護者を対照群とし、情報を入手した。

 主な結果は以下のとおり。

・2020年にeラーニングコースを完了した介護者は268人であった。
・患者268例中63例が認知症患者であり、56例(20.9%)がフォローアップ評価を実施できた。
・平均NPIスコアは、ベースライン(20.4±16.2)から最新のフォローアップ評価(14.3±13.4)まで有意な減少が認められた。
・エフェクトサイズは、中程度であると推定された(Cohen's drm=0.40)。
・対面によるトレーニングコースを完了した介護者(対照群)は252人であった。
・患者252例中114例(45.2%)がフォローアップ評価を実施できた。
・eラーニングコースを完了した介護者は、対照群と比較し、フォローアップ評価を実施する割合が有意に低かった(χ2=52.0、p<0.001)。
・NPIスコアの変化は、トレーニングコースの種類で違いは認められなかった(coefficient=-0.61、p=0.69)。

 著者らは「対面トレーニングをeラーニングに変更することで、これまでプログラムに参加できなかった専門の介護者にDEMBASE認知症ケアプログラムへ参加する機会を創出することができた。どちらのトレーニングコースでもプログラムの効果は同等であったが、再現性は最適ではなく、eラーニングコースを受けた介護者の実施レベルは低かった。実現可能性を改善するためには、実施や技術支援の動機付けを提示できる戦略を開発する必要がある。また、オンラインコミュニティを使用したプログラムについても調査する必要がある」としている。

(鷹野 敦夫)

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