日本では、認知症患者数が急速に増加しており、エビデンスベースの作業療法(EBOT)に対するニーズが高まっている。このEBOTについて、認知症に対する臨床的改善効果が報告されている。北海道大学の長谷川 愛氏らは、日本の認知症患者に対するEBOTの現在の実践状況を調査し、EBOTの実践に影響を及ぼす因子を明らかにするため、検討を行った。Hong Kong Journal of Occupational Therapy誌2020年12月号の報告。
認知症患者の治療を行っている作業療法士432人を対象に、郵送にて匿名の自己報告アンケートを実施した。記述統計データを整理し、EBOTの実践に影響を及ぼす因子を明らかにするため、重回帰分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・アンケート回収率は、31.3%(135人)であった。
・EBOTの実践頻度に関する質問に対し、頻繁(7段階のスケールで5以上)に実施していると回答した作業療法士の割合は、46.3%であった。
・ステップワイズ法による重回帰分析を用いて、最もフィットしたモデルを選択した。
・このモデルにより、β値の高い(影響力の強い)以下の3つの因子が抽出された。
●科学的論文を理解する能力:β=0.419
●情報取得方法の十分さ:β=0.214
●アドバイスの利用可能性:β=0.158
著者らは「日本の認知症患者に対するEBOTの実践には、3つの因子が重要となる。作業療法士は、科学的論文の質を評価することのできる読解力の習得が求められる。また、さまざまな論文にアクセス可能な環境を整備し、上司や同僚などとの議論をする場を設けることが必要である」としている。
(鷹野 敦夫)