小児の注意欠如多動症(ADHD)特性には、出生時の体重を含む遺伝的要因および出生前、周産期の因子が関連している。浜松医科大学のMohammad Shafiur Rahman氏らは、日本人小児の出生時体重とADHD特性との関連に対するADHDの遺伝的リスクの影響について、調査を行った。BMC Medicine誌2021年9月24日号の報告。
日本人小児におけるADHDの遺伝的リスクや低出生体重とADHD特性との関連を調査するため、縦断的出生コホート研究(浜松母と子の出生コホート研究)を実施した。小児1,258人のうちフォローアップを完了した8~9歳児796人を対象に分析を行った。出生体重別に、2,000g未満、2,000~2,499g、2,500g以上の3群に分類した。ADHDのポリジーンリスクスコアは、大規模ゲノムワイド関連解析のサマリーデータを用いて生成した。ADHD評価尺度IV(ADHD-RS)は、親からの報告に基づきADHD特性(不注意および多動性/衝動性)を評価した。以前の研究と同様に、性別、子供の出生順位、出生時の在胎週数、出産時の母親の年齢、学歴、妊娠前のBMI、妊娠前または妊娠中の喫煙状況、妊娠中のアルコール摂取、父親の年齢、教育、年間世帯収入を共変量とした。出生時の体重とADHD特性との関連を評価するため、潜在的な共変量で調整した後、多変量負の二項分布を用いた。出生時の体重群とバイナリーポリジーンリスクとの相互作用をモデルに追加した。
主な結果は以下のとおり。
・出生体重2,000~2,499g群では、ADHD特性との関連は認められなかった。
・出生体重2,000g未満群では、不注意および多動性との有意な関連が認められた。
・ADHDの遺伝的リスクとの関連については、遺伝的リスクが高く、出生体重2,000g未満群の場合のみ、不注意(RR:1.56、95%CI:1.07~2.27)および多動性(RR:1.87、95%CI:1.14~3.06)との関連が認められた。
著者らは「2,000g未満の低出生体重は、ADHDの遺伝的リスクとともに、8~9歳の日本人小児のADHD特性レベルを上昇させる因子であることが示唆された。この低出生体重とADHDとの関連は、ADHDに対する遺伝的感受性を有する小児に限定されており、病因における遺伝的環境の相互作用との関連が認められた」としている。
(鷹野 敦夫)