注意欠如多動症(ADHD)は、多動性、衝動性および/または不注意の症状を呈す疾患である。日本で使用可能なADHD治療薬は、欧米諸国に比べ限られている。また、日本の臨床現場では、処方状況の評価が十分に行われていない。東京医科歯科大学の佐々木 祥乃氏らは、日本の臨床現場におけるADHD治療薬の現在の使用状況と複数のADHD治療薬を投与された患者の特徴について、調査を行った。PLOS ONE誌2021年6月3日号の報告。
対象は、2015年4月~2020年3月に国立国際医療研究センター国府台病院の児童精神科を受診した患者。メチルフェニデート徐放剤、アトモキセチン、グアンファシンを投与した患者を調査した。複数のADHD治療薬を投与された患者の特徴を評価するため、レトロスペクティブケースコントロールデザインを用いた。3つのADHD治療薬を投与された患者は、症例群として定義した。ADHDと診断された患者と年齢、性別が一致するランダムサンプリング患者を対照群として用いた。子供から親への暴力、反社会的行動、自殺企図または自傷行為、虐待歴、登校拒否、2つの心理的評価尺度(ADHD評価尺度、東京自閉行動尺度)のデータを比較した。
主な結果は以下のとおり。
・ADHD治療薬を投与された患者878例のうち、3つのADHD治療薬を投与された患者は43例(4.9%)であった。
・ロジスティック回帰分析において、3つのADHD治療薬を投与された患者の特徴は以下のとおりであった。
●重度のADHD症状
●自閉的特徴
●子供から親への暴力の傾向
著者らは「本調査結果は、複数のADHD治療薬の使用を防ぐためのアプローチを示唆している。薬剤の使用状況と臨床的特徴の因果関係を調査するためには、プロスペクティブ研究が必要とされる」としている。
(鷹野 敦夫)