双極性障害の臨床的特徴や疾患経過に性差が影響するといわれている。スペイン・バルセロナ大学のBrisa Sole氏らは、寛解期双極性障害患者の大規模サンプルにおける神経認知機能と心理社会的機能に対する性差の影響について検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年9月25日号の報告。
対象は、双極性障害患者347例(男性:148例、女性199例)および健康対照者115例(男性45例、女性70例)。6つの認知領域および心理社会的機能を評価する包括的な神経心理学的バッテリーのパフォーマンスは、線形混合モデルを用いて評価した。主要効果として、性別および群間で比較し、ランダム効果として、性差による群間で比較した。
主な結果は以下のとおり。
・男性は女性と比較し、作業記憶(p<0.001)のパフォーマンスが優れていた。
・女性は男性と比較し、言語学習(p=0.03)および記憶認知(p=0.03)のパフォーマンスが優れていた。
・性差による群間における認知機能の有意な差は認められなかった。
・心理社会的機能では、全体的な性差および性差による群間における違いは認められなかった。
・本検討では、視空間作業記憶に関する評価は行わなかった。
著者らは「双極性障害における神経認知および心理社会的機能に関して、全体的な性差は認められなかった。しかし、作業記憶や言語記憶などの一部に違いが認められた。特定のニーズに合わせ個別化された治療計画を実行するためには、性別を含む各患者の個人差を考慮する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)