新型コロナのファイザー製ワクチン(BNT162b2:以下、ワクチン)の60歳以上での抗体価の持続については、まだ不明瞭な点が多い。そこで今回、イスラエル・テルアビブ大学のNoa Eliakim-Raz氏らは、60歳以上を対象に3回目ワクチンの接種前後の抗体価を調査した。その結果、3回目接種が接種10~19日後のIgG抗体価の増加と有意に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版11月5日号のリサーチレターに掲載された。
ワクチン3回目接種前と接種10~19日後のIgG抗体価をを測定
ワクチンを2回接種した人の免疫応答を年齢で見た場合、65~85歳では18~55歳よりも低いことが明らかになっている。さらに、2回目のワクチンを接種した4,868人の医療従事者でとくに65歳以上では、2回目接種から6ヵ月以内に液性免疫(IgG抗体、中和抗体)の有意な低下が観察されている。また、イスラエルのある研究
1)で、3回目接種が新型コロナウイルス感染と重症者の発生率低下との関連性を示唆していたことから、本研究では60歳以上の3回目接種による免疫反応を見るために、血清学的検査データを評価項目として追加した。
イスラエルでのワクチン3回目接種が世界で初めて承認後、Rabin Medical Center(RMC)のワクチン接種センターで60歳以上の研究参加者を募集、97例が適格だった。除外基準は、新型コロナウイルス既感染者と活動性の悪性腫瘍を有する者だった。IgG抗体価を3回目の接種前(2021年8月4~12日)と接種10~19日後(2021年8月16〜24日)にSARS-CoV-2 IgG II Quant assayを用いて測定した。血清陽性は、50任意単位(AU:arbitrary units)/mL以上と定義された。
ワクチン3回目接種前と接種10~19日後の抗体価を調査した主な結果は以下のとおり。
・97例の年齢中央値は70歳(四分位数[IQR]:67~74)で、61%が女性だった。
・3回目の投与前(最初のワクチン接種後の中央値:221日、IQR:218~225)の段階で、94例(97%)が陽性だった。
・IgG抗体価の中央値は、3回目接種後に有意に増加し、440AU/mL(IQR:294~923)から2万5,468AU/mL(IQR:1万4,203~3万6,618、p<0.001)と、全参加者が陽性になった。
・年齢とIgG抗体価の間に有意な相関は観察されなかった(R=-0.075、p=0.47 )。
・年齢、性別、1回目接種後からの日数、併存疾患(脂質異常症、高血圧症、肥満、糖尿病、虚血性心疾患)など、IgG抗体価の上昇と有意に関連する変数はみられなかった。
・重大な有害事象は報告されなかった。
研究の限界として、サンプルサイズが小さいこと、フォローアップが短いこと、細胞性免疫や中和抗体に関する検査がないことがあったが、IgG応答が疾患保護に相関関係であること、細胞性免疫も新型コロナウイルスからの保護に重要な役割を果たすことが示唆された。
(ケアネット 土井 舞子)