接種勧奨再開のHPVワクチン、男性にも高い有効性

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2021/12/03

 

 副反応の報道により、2013年から個別接種の積極的勧奨が中止されていたHPVワクチンについて、国内外から有効性と安全性を認める報告が集積し、ついに2022年4月から積極的勧奨が再開される見通しだ。定期接種として無料で接種できるのは13~16歳の女子だが、同ワクチンが若年男性の感染症およびウイルス起因のがん予防に有効であるという報告が、The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版11月12日号に掲載された。

 米国マウントサイナイ医科大のStephen E Goldstone氏らによる本研究は、4価のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを用いた、16~26歳の男性1,803例を対象とした無作為化プラセボ対照試験。10年間の追跡調査で、HPV6または11に関連した外性器疣贅、HPV6、11、16、18に関連した性器病変および肛門異形成の発生率を評価した。

 3年間の基礎試験は18ヵ国71施設で実施された。対象は異性愛者の男性(16~23歳)または男性と性交渉を持つ男性(=MSM、16~26歳)で、スクリーニング時にHPV以外の性感染症への感染を示唆する肛門性疣贅や性器病変がある、またはそのような所見の既往歴がある例は除外された。参加者は4価HPVワクチンまたはプラセボのいずれかを、1日目、2ヵ月目、6ヵ月目の計3回接種した(両群比1対1)。

 続く7年間の長期フォローアップ試験は、16ヵ国46施設で行われた。基礎試験の期間中に4価HPVワクチンを1回以上接種した参加者が登録可能とされた(早期群)。プラセボ群は、基本試験の終了時に4価HPVワクチンの3回接種を行い、1回以上接種した時点で長期フォローアップの対象となった(キャッチアップ群)。

 有効性に関する主要評価項目は以下のとおり。

・全被験者におけるHPV6または11に関連した外性器疣贅の発生率
・HPV6、11、16、18に関連した性器病変の発生率
・MSM例におけるHPV6、11、16、18に関連した肛門上皮内新生物(肛門疣贅と扁平病変を含む)または肛門がんの発生率

 早期群のper-protocol集団における主要な効果分析は、1)3回のワクチン接種を受けた、2)1日目に血清陰性、1日目から7ヵ月目まで分析対象となるHPV型のPCR検査陰性、3)ワクチン効果の評価に影響を与えるプロトコル違反がない、4)長期フォローアップ中に1回以上の診察を受けた参加者を対象とした。

 キャッチアップ群における有効性は修正intention-to-treat集団で評価され、1)1回以上ワクチン接種を受けた、2)ワクチン接種前の基本試験1日目から最終フォローアップ診察日までのPCR検査陰性、3)長期フォローアップ中に1回以上の診察を受けた参加者を対象とした。

 主な結果は以下のとおり。

・2010年8月10日~2017年4月3日の間に1,803例が登録され、うち936例(異性愛:827例、MSM:109例)が早期群に、867例(異性愛:739例、MSM:128例)がキャッチアップ群に組み入れられた。
・早期群はワクチン3回目接種後に中央値9.5(範囲:0.1~11.5)年、キャッチアップ群は3回目接種後に中央値4.7(0.0~6.6)年のフォローアップ調査を受けた。
・「長期フォローアップ中の早期群」と「基本試験中のプラセボ群」を比較した1万人年当たりの発生率は以下のとおり。
●外性器疣贅:0.0(95%CI:0.0~8.7)対137.3(83.9~212.1)
●外性器病変:0.0(0.0~7.7)対140.4(89.0~210.7)
●MSMの肛門上皮内新生物または肛門がん:20.5(0.5~114.4)対906.2(553.5~1,399.5)
・キャッチアップ群の「ワクチン接種前の基本調査中」と「ワクチン接種後のフォローアップ中」を比較したの1万人年当たりの発生率は以下のとおり。
●外性器疣贅:149.6(101.6~212.3)対0(0.0~13.5)
●MSMの肛門上皮内新生物または肛門がん:886.0(583.9~1289.1)対101.3(32.9~236.3)
・フォローアップ中のキャッチアップ群において、外性器病変の新規報告例はなかった。
・ワクチンに関連した重篤な有害事象は報告されなかった。

 著者らは「4価のHPVワクチンは、HPV6、11、16、18に関連する肛門性器疾患に対する持続的な保護を提供する。この結果は、キャッチアップ接種を含む男性への4価HPVワクチン接種を支持するものである」としている。

 国内におけるHPVワクチンの承認状況は、女性対象は2価(商品名:サーバリックス)、4価(ガーダシル)、9価(シルガード9)が承認済みだが、男性対象は4価のみで公費助成は対象外、適応は肛門がん(扁平上皮がん)およびその前駆病変、尖圭コンジローマとなる。海外では男性に対しても接種勧奨や公費助成の対象とする国も多い。

(ケアネット 杉崎 真名)