藤田医科大学の波多野 正和氏らは、服薬アドヒアランスに影響を及ぼす因子を特定するため、統合失調症患者を対象に処方された抗精神病薬の製剤に関する主観的なアンケート調査を実施した。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2021年11月30日号の報告。
DAI-10と製剤満足度との間に中程度の相関
処方された抗精神病薬の製剤に対する患者の満足度および不満度を評価するため、薬に対する構えの評価尺度(DAI-10)を用いた。対象患者は、同一成分、同一製剤の抗精神病薬を1ヵ月以上服用している20~75歳の統合失調症患者とした。
DA-10を用いた抗精神病薬に関する主観的アンケート調査の主な結果は以下のとおり。
・アンケートに回答した患者は301例であった。
・統合失調症患者に最も処方されている抗精神病薬の製剤は、錠剤(174例、57.8%)であり、次いで持続性注射剤(93例、30.9%)であった。
・製剤で、製剤満足度とDAI-10との有意な関係は認められなかった。
・持続性注射剤以外の製剤を選択していた患者の半数以上は、製剤は「医師により決定」と回答した。
・製剤選択において、「医師との協議により決定」と回答した患者は、「医師により決定」と回答した患者と比較し、満足度(4.11±0.77 vs.3.80±1.00、p=0.0073)やDAI-10スコア(6.20±3.51 vs.4.39±4.56、p<0.001)が有意に高かった。
・満足度とDAI-10との間には、中程度の相関が認められた(r=0.48、p<0.001)。
著者らは「すべての患者に対し高い満足度が得られる製剤はないため、個々の好みを薬物療法に反映させる必要がある。製剤を選択するうえで意思決定を共有することは、服薬アドヒアランスの改善に役立つと考えられる」としている。
(鷹野 敦夫)