藤田医科大学の岸 太郎氏らは、双極性障害患者に対し抗精神病薬や気分安定薬を中止した場合と継続した場合の再発率を比較するため、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のランダム効果モデルメタ解析を実施した。Psychological Medicine誌オンライン版2020年10月13日号の報告。
2020年5月22日までに報告された研究を、言語制限なしで、Embase、PubMed、CENTRALデータベースよりシステマティックに検索した。独立した研究者が研究を評価し、データを抽出した。リスク比(RR)と有用性または有害性の治療必要数(NNTB/NNTH)を算出した。主要アウトカムは、6ヵ月時点での気分エピソードの再発率とした。副次的アウトカムは、抑うつエピソードおよび躁状態/軽躁状態/混合性エピソードの再発率、6ヵ月時点でのすべての原因による中止とした。また、これらのアウトカムの評価は、1、3、9、12、18、24ヵ月目に行われた。
主な結果は以下のとおり。
・アリピプラゾール、アセナピン、divalproex、アリピプラゾール長時間作用型注射剤(LAI)、リスペリドンLAI、ラモトリギン、リチウム、オランザピン、パリペリドン、クエチアピンを使用した研究22件(5,462例)が抽出された。
・平均研究期間は、64.50±69.35週であった。
・抗精神病薬を継続した場合、すべての評価時点において、あらゆる気分エピソード、抑うつエピソード、躁状態/軽躁状態/混合性エピソードの再発率が低く、すべての原因による中止率も低下した。
・6ヵ月時点での再発率およびすべての原因による中止率のRRは以下のとおりであった。
●あらゆる気分エピソード:0.61(95%CI:0.54~0.70、NNT:5)
●抑うつエピソード:0.72(95%CI:0.60~0.87、NNT:13)
●躁状態/軽躁状態/混合性エピソード:0.45(95%CI:0.36~0.57、NNT:6)
●すべての原因による中止:0.71(95%CI:0.61~0.82、NNT:6)
著者らは「症状が安定した双極性障害患者に対する薬物療法の継続は、最大24ヵ月間の再発を抑制することが示唆された。1ヵ月以上の薬物治療の中止は、再発リスクを有意に上昇させた。しかし、6ヵ月間薬物療法を中止した患者のうち47.3%は再発しなかった」としている。
(鷹野 敦夫)