ブロナンセリン経皮吸収型製剤への切り替えによる錐体外路症状への影響

提供元:ケアネット

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公開日:2021/12/15

 

 ブロナンセリンは、統合失調症治療に用いられる第2世代抗精神病薬であり、経口剤(錠剤、散剤)だけでなく経皮吸収型製剤としても使用可能な薬剤である。岐阜大学の大井 一高氏らは、統合失調症患者に対しブロナンセリンの経口剤から経皮吸収型製剤への切り替えを行うことにより、錐体外路症状(EPS)の減少および/または薬物動態安定による抗パーキンソン薬の投与量減少に寄与するかについて、52週間の非盲検試験の事後分析を実施し、評価を行った。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年11月3日号の報告。

 統合失調症患者155例をコホート1またはコホート2のいずれかにエントリーした。コホート1では、97例に対しブロナンセリンの錠剤8~16mg/日を6週間投与した後、同薬剤の経皮吸収型製剤40~80mg/日へ切り替えて1年間投与を行った。なお、経皮吸収型製剤の投与量は、錠剤の投与量に基づき決定した。コホート2では、ブロナンセリンの経口剤(錠剤、散剤)投与後の58例に対し、同薬剤の経皮吸収型製剤40mg/日から開始し40~80mg/日に切り替える治療を1年間継続した。3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月の時点での経皮吸収型製剤開始後のEPSの変化および抗パーキンソン薬の投与量の変化は、薬原性錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)、抗パーキンソン薬のビペリデン換算量でそれぞれ評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・155例中EPSにより経皮吸収型製剤を中止した患者は、コホート1の4例のみであった。
・両コホートにおける経皮吸収型製剤開始後のDIEPSS合計スコアの平均変化では、統計学的に有意な改善が認められた。
【コホート1】
3ヵ月時点:-0.44±1.50(p=0.013)
6ヵ月時点:-0.07±1.78(p=0.73)
12ヵ月時点:-0.14±1.37(p=0.44)
【コホート2】
3ヵ月時点:-0.16±1.32(p=0.40)
6ヵ月時点:-0.74±1.92(p=0.020)
12ヵ月時点:-0.81±2.22(p=0.047)
・抗パーキンソン薬のビペリデン換算量は、経皮吸収型製剤開始後、有意な変化は認められなかった。

 著者らは「ブロナンセリンの経皮吸収型製剤は、同薬剤の錠剤や散剤と比較し、EPSのリスクを減少させるために効果的な投与経路であると考えられる」としている。

(鷹野 敦夫)