うつ病患者は、他の併存疾患を有する可能性が高いといわれているが、これまでの併存疾患に関する研究は、主に特定の一般的な疾患に焦点が当てられており、また自己申告のデータに依存していた。中国・電子科技大学のHang Qiu氏らは、全範囲の慢性疾患を対象とし、うつ病患者における併存疾患の調査を行うため、ネットワークメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2022年1月1日号の報告。
本レトロスペクティブ研究では、うつ病入院患者2万2,872例とこれに1:1でマッチした対照群の登録を行った。併存疾患を測定するために、退院記録を集計し、有病率1%以上の患者について、さらなる分析を行った。共起頻度に基づいて、うつ病患者の性別および年齢別の併存疾患ネットワークを構築し、その結果を対照群と比較した。高度に相互リンクされたコミュニティを検出するため、Louvainアルゴリズムを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・うつ病患者は、平均4つの併存疾患を有しており、84.4%で1つ以上の併存疾患が認められた。
・うつ病を対象とした併存疾患ネットワークは、対照群よりも複雑であった(839 vs. 369)。
・うつ病患者の併存疾患ネットワーク内には、複雑ではあるが明確なコミュニティが発見された。その最大のコミュニティは、脳血管疾患、慢性虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症が含まれた。
・性別特有の疾患は、中枢神経性疾患であった。また、男女ともに心血管疾患が主要な中枢性疾患であった。
・併存疾患ネットワークの主要な疾患は、うつ病患者が高齢になるほど、疾患重症度が高まった。
・なお、観察された相互関連の因果関係は特定できなかった。
著者らは「併存疾患のパターンを評価するための縦断的な医療データセットへのネットワーク解析の適用は、従来の臨床研究のアプローチを補完するうえで役立つであろう。本調査結果により、うつ病関連の併存疾患についての理解が向上し、うつ病の統合管理が強化されることが望まれる」としている。
(鷹野 敦夫)