オミクロン株の急拡大が進み、早くも医療現場の逼迫が見えている中、マスクは最も重要な個人防護具の1つである。わが国では、マスクの品質管理の一環として、日本産業規格(JIS)が2021年6月に制定された。しかし、適切な基準を満たさない製品も多く流通していることが懸念され、医療機関それぞれが対策しなければならない。そこで、N95マスクについて医療従事者が知っておくべき基本事項をまとめた。
N95マスクの「N95」とは米国の防塵マスクの規格
国立感染症研究所が作成した「
新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(2020年6月2日改訂版)」では、N95マスクはエアロゾルが発生する可能性のある手技(気道吸引、気管内挿管、下気道検体採取等)を行う際に装着し、使用に際しては、事前のフィットテストと着用時のシールチェックが推奨されている。正しい着用方法はN95マスクを開発したスリーエム(3M)作成の「
医療従事者のためのN95マスク適正使用ガイド」が参考になる。
なお、N95マスクの「N95」とは、米国の労働安全衛生研究所で定められた防塵マスクの規格(NIOSH-42CFR84)だが、わが国では以下に示す他規格の製品についても、
品質を確認し問題がなければN95マスクと同等に扱うとされている。
・DS2(日本規格:厚労省2018)※労働安全衛生法に基づく防塵マスクの性能規格
・FFP2、FFP3(欧州規格:EN149-2001)
・KN95(中国規格:GB2626-2006)
ただし、海外のN95マスクはFDAで緊急使用承認を受けたものに限られる。また、DS2マスクは、患者の血液や体液等が浸透する恐れのある手術や処置を行う場合には使用できない(検体採取は該当しないので使用可)。
安全なマスク製品かどうかの確認方法については、医療用感染防護具の適正使用を支援する一般社団法人 職業感染制御研究会が「
KN95等の不良品マスクを見分ける方法」を公開している。同会ホームページでは、フィットテストの解説動画やマスクの再利用、サージカルマスクの規格基準などについても、網羅的に情報提供している。
マスクの国際規格について、3Mの
技術情報によると、韓国の規格「KF94(KMOEL-2017-64)」や、オーストラリア・ニュージーランドの規格「P2(AS/NZA 1716:2012)」などもN95マスクに近い性能を持つとされるが、わが国の資料には記載されていない。
(ケアネット 堀間 莉穂)