第5波と比較して第6波では、発症から中等症II以上(中等症II、重症、死亡)への移行までの日数(最頻値)が4日短縮され、移行率は低いものの、移行例ではより短期間に悪化が進む可能性が示唆された。2月2日に開催された第70回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで、広島県健康福祉局の木下 栄作氏が「広島県新型コロナウイルス感染症J-SPEEDデータからの知見~第6波データ分析(速報)」を報告した。
分析に使われたデータは広島県内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者データで、第5波は2021年7月1日~10月31日公表患者について、第6波は2021年12月22日~2022年1月29日公表患者(デルタ株感染患者を含む)のデータを用いて分析している。広島県では1月上旬から急速な感染拡大がみられ、12月30日~1月4日での県内のスクリーニング検査では、オミクロン株の疑いのある割合が約8割と報告されている。
第5波と比べ中等症II以上は顕著に減少、移行までの日数は短縮傾向
年代別に中等症II以上の割合をみると、第5波と比較して第6波ではすべての年代で顕著に減少。第5波で中等症II以上の割合が最も多かった60代以上(22.7%、234/1,031人)について第6波ではその割合が6.1%(225/3,678人)に、40~50代では第5波12.3%(361/2,936人)に対し第6波0.3%(20/5,904人)となっている。
発症(無症状や発症日不明の場合は陽性判明)から中等症II以上への移行までの日数を比較すると、第5波では最頻値が7日だったのに対し、第6波では3日と4日短縮している。中等症II以上に悪化した患者の8割は10日以内に悪化しており、50代以下ではより短く、8割が7日以内に悪化していた。
中等症II以上には高齢・性別・ワクチン接種(2回以上)が有意に関連
多変量解析により中等症II以上と関連するリスク因子をみた結果、第6波の解析対象データ(319例)では65歳以上(オッズ比[OR]:9.4、95%信頼区間[CI]:3.7~23.5、p<0.01)、男性(OR:2.2、95%CI:1.0~4.9、p=0.04)が有意に関連していた。また、ワクチン接種(2回以上)が中等症II以上に対する予防効果と有意に関連(OR:0.3、95%CI:0.1~0.7、p<0.01)していた。
65歳以上、男性、BMI25以上、高血圧・心疾患、糖尿病、認知症・精神疾患という6つのリスク因子についてその保有数と中等症II以上となるリスクの関連についてみると、リスク因子の数が多いほど中等症IIの割合が高く、全体の移行率は第6波で低いものの、その傾向は第5波と第6波で変わらなかった。
第6波での60歳以上の重症化率は1.45%、致死率は0.96%(暫定値)
そのほか、広島県のデータを使用し、2022年1月1日~1月14日の期間における新型コロナウイルス感染者7,542人を対象に、年齢階級別、ワクチン接種歴別に重症化率および致死率を暫定版として算出した結果も報告された。なお、人工呼吸器の使用、ECMOの使用、ICU等で治療のいずれかの条件に当てはまる患者を重症者と定義し、重症者には、経過中重症に至ったが、死亡とならなかった患者、重症化して死亡した患者、重症化せず死亡した患者が含まれる。また、ワクチン接種歴ありはワクチンを1回以上接種した者、ワクチン接種歴なしは未接種および接種歴不明の者が含まれる(1月26日時点でのステータスに基づき算出しており、重症者数や死亡者数は増加する可能性がある)。
全体として、60歳未満の重症化率は0.04%/致死率は0.00%、60歳以上の重症化率は1.45%/致死率は0.96%と算定された。ワクチン接種状況別にみると、ワクチン接種歴あり(1回以上)では、60歳未満の重症化率は0.02%/致死率は0.00%、60歳以上の重症化率は0.96%/致死率は0.55%。ワクチン接種歴なしでは、60歳未満の重症化率は0.09%/致死率は0.00%、60歳以上の重症化率は5.05%/致死率は4.04%だった。
(ケアネット 遊佐 なつみ)