薬物誘発性パーキンソニズムや遅発性ジスキネジアは、統合失調症の健康関連QOLの低下と関連しているといわれているが、これらの相対的な影響を調べた研究はこれまでほとんどなかった。シンガポール・Institute of Mental HealthのGurpreet Rekhi氏らは、統合失調症における薬物誘発性パーキンソニズムおよび遅発性ジスキネジアと健康関連QOLとの関連を調査し、比較を行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2022年1月3日号の報告。
対象は、統合失調症患者903例。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、Simpson-Angus 錐体外路系副作用評価尺度(SAS)、異常不随意運動評価尺度(AIMS)を用いて評価した。健康関連QOLの評価には、以前検証したアルゴリズムよりPANSSスコアに基づいたEQ-5D-5Lを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・薬物誘発性パーキンソニズムのみは160例(17.7%)、遅発性ジスキネジアのみは119例(13.2%)、その両方は123例(13.6%)に認められた。
・健康関連QOLは、薬物誘発性パーキンソニズムと遅発性ジスキネジアの両方が認められた患者で最も低く、次いで薬物誘発性パーキンソニズムのみの患者、遅発性ジスキネジアのみの患者であり、いずれも認められなかった患者で最も高かった。
・健康関連QOLスコアは、4群間で有意な違いが認められた(F[3,892]=13.724、p<0.001、η2p=0.044)。
・薬物誘発性パーキンソニズムのみ、または薬物誘発性パーキンソニズムと遅発性ジスキネジアの両方が認められた患者の健康関連QOLは、いずれも認められなかった患者と比較し、有意に低かった。
・健康関連QOLとの関連において、薬物誘発性パーキンソニズムと遅発性ジスキネジアの有無との間に有意な関係は認められなかった。
著者らは「薬物誘発性パーキンソニズムは、統合失調症患者の健康関連QOLの低下と関連する主な抗精神病薬誘発性の運動障害であった。臨床医は、統合失調症患者の健康関連QOLの最適化を図るため、薬物誘発性パーキンソニズムの予防、検出、効果的なマネジメントに焦点を当てる必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)