抗がん剤は薬剤性間質性肺疾患の主な原因であり、原因薬剤としてブレオマイシン、エベロリムス、エルロチニブ、トラスツズマブ デルクステカン、免疫チェックポイント阻害薬などが挙げられる。薬剤性間質性肺疾患の特定と管理は難しく、抗がん剤によって引き起こされる間質性肺疾患の診断と治療に関する具体的なガイドラインは現在存在しない。今回、イタリア・IOV-Istituto Oncologico Veneto IRCCSのPierfranco Conte氏らの学際的グループが、公表文献と臨床専門知識に基づいて、がん患者の薬剤性間質性肺疾患の診断と治療における推奨事項を作成した。ESMO Open誌2022年2月23日号に掲載。
主な推奨事項は以下のとおりで、薬剤性間質性肺疾患の診断・治療における多職種連携の重要性を強調している。
・診断手順の重要な要素は、身体検査と丁寧な病歴聴取、バイタルサイン(とくに呼吸数と動脈血酸素飽和度)の測定、関連のある臨床検査、スパイロメーターと一酸化炭素肺拡散能による呼吸機能検査、CT/画像診断である。
・薬剤性間質性肺疾患の臨床症状やX線画像は、肺炎や間質性肺疾患と類似していることが多いため、感染性の原因を除外または確認するための微生物検査や血清学的検査を含む鑑別診断が重要である。
・ほとんどの場合、薬剤性間質性肺疾患の治療には、抗がん剤の投与中止と短期ステロイド投与が必要である。薬剤性間質性肺疾患の再活性化を防ぐためにステロイドをゆっくり漸減する必要がある。
・Grade3~4の薬剤性間質性肺疾患の患者は入院が必要で、多くの場合、酸素吸入と非侵襲的人工呼吸が必要である。侵襲的人工呼吸については、がんの予後を考慮して決定する必要がある。
(ケアネット 金沢 浩子)