軽い飲酒でもCVDリスク上昇、英国37万人の遺伝疫学研究

提供元:ケアネット

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公開日:2022/04/25

 

 これまで報告された適度な飲酒の有益性は、ほかの健康的なライフスタイル因子による影響かもしれない。米国のMIT・ハーバード大学ブロード研究所のKiran J. Biddinger氏らは、UK Biobankの参加者37万1,463例のデータを用いて、さまざまな量の習慣的アルコール摂取と心血管疾患(CVD)リスクとの遺伝疫学的な関連を調査し、その結果を2022年3月25日、JAMA Network Openで報告した。

 今回、遺伝学的データを含む英国の大規模前向きコホート研究UK Biobankで、2006~10年に参加者を集めて2016年まで追跡調査を行い、線形および非線形メンデルランダム化分析を用いて評価した。データ解析は、2019年7月~2022年1月に実施。参加者のアルコール摂取量は、米国のアルコール消費量尺度Standard drink(1drinkは約14gのアルコールを含む)を用いて評価され、1週間のアルコール摂取量によって禁酒者(0 drink)、軽度(0〜8.4 drinks)、中等度(8.4〜15.4 drinks)、重度(15.4〜24.5 drinks)、乱用(24.5 drinks)と定義された。

 主な結果は以下のとおり。

・本研究には、週に平均(SD)9.2(10.6)drinksを摂取する37万1,463例の参加者が含まれた。平均年齢(SD)は57.0(7.9)歳で、その内46%(17万2,400例)が男性だった。

・全体の33%(12万1,708例)が高血圧症、7.5%(2万7,667例)が冠動脈疾患を患っていた。

・軽度から中等度のアルコール摂取は、より健康的なライフスタイル因子と関連しており、これらを調整すると、適度なアルコール摂取による心臓保護的な疫学的関連が弱くなることが明らかになった。

・線形メンデルランダム化分析では、遺伝的に予測されるアルコール摂取量1SD増加当たりの高血圧リスクは1.3倍(95%CI:1.2-1.4、p<0.001)、冠動脈疾患リスクは1.4倍(95%CI:1.1-1.8、p=0.006)高くなった。

・非線形メンデルランダム化分析により、アルコール摂取量と高血圧症および冠動脈疾患との因果関係が示唆された。軽度のアルコール摂取でもCVDリスクはわずかに上昇し、重度のアルコール摂取では症候性および無症候性CVDリスクが指数関数的に上昇した。

 研究者らは、「今回の結果によって、これまでの疫学研究で一貫していた軽度~中程度のアルコール摂取による有益性は、適度な飲酒をたしなむ個人に共通するほかの健康的なライフスタイル因子による可能性が高いことが示唆された」とコメントしている。

(ケアネット 堀間 莉穂)